<東京国体:陸上>◇6日◇味の素スタジアム

 女子棒高跳びロンドン五輪代表だった我孫子智美(25=滋賀レイクスターズ、滋賀)に笑顔が戻った。4メートル20の大会新で今季初優勝を飾ったのだ。

 競技後の我孫子からは今季の苦しさを象徴する言葉が発せられた。「10年棒高跳びをやっていますが、ポールを突っ込むことに恐怖心を持ってしまいました」。

 ポールを持って助走をし、踏み切りと同時に地面に埋め込んだ深さ20センチのボックスに突っ込んで湾曲させる。元に戻るポールに体をぶら下げて上昇していくのが棒高跳びという種目。思い切って突っ込めなくなったらポールの曲げ具合が小さくなり、体を上げることができなくなる。

 原因はケガに苦しめられたことだった。2月に4メートル33の室内日本新を跳んだところまでは順調だったが、3月中旬に背中に痛みが出た。無理をして練習を続けたことで、腰や脇腹にも痛みが走るようになった。「痛みをかばってやっていたためにポールの出し方や助走が狂って、悪循環に陥ってしまいました」。

 6月の日本選手権も含め、ほとんどの試合で最初の高さが跳べずに記録なしに終わっていた。「9月の全日本実業団までダメでしたが(記録なし)、国体に県代表として選んでいただいたからには結果を出さないといけません。4メートル20は久しぶりに“あー、跳べたな”という跳躍でした。自分に勝ててホッとしています」。

 4メートル20はかなり余裕を持ってクリアしたが、「腰ももう少しの状態なので」と、以後の試技は大事をとって棄権した。

 今年のモスクワ世界陸上では標準記録Bが4メートル50と、我孫子の日本記録を上回る高さに設定されていた。その高さに再挑戦するスタートラインに、シーズン終盤でやっと立つことができた。