<東京国体:陸上>◇最終日◇8日◇味の素スタジアム

 女子4×100メートルリレーは岩手が44秒89で初優勝した。「とってもうれしいです。予選、準決勝(44秒86の大会新)から良い風に乗れていたので自分たちの走りに集中し、楽しんで走りました」。アンカーでチーム唯一の成年選手の藤沢沙也加(22=セレスポ)は声を弾ませた。

 陸上競技が盛んな土地柄ではなく、「以前はリレーで勝つなんてあり得ないでしょ、という雰囲気がありました」(清水茂幸岩手県チーム監督)。今回のメンバーも3人が個人種目の入賞者だったが、2位・東京の藤森安奈(19=青学大)や3位・北海道の福島千里(25=北海道ハイテクAC)のような、日本代表クラスのエースはいない。

 だが、少年B200メートル優勝の川村知巳(盛岡一高1年)が抜群のスタートを切ると、2走の小山琴海(盛岡誠桜高3年)、3走の土橋智花(盛岡誠桜高3年)も好走。東京を少しリードして4走の藤沢にバトンが渡った。藤沢は200メートル、400メートルのロングスプリンターだが「加速付きのリレーならすごい走りをする」(清水監督)選手。東京を大きく引き離してゴールに飛び込んだ。

 岩手大出身の藤沢は3月11日が誕生日。3年前、自身の20歳の誕生パーティーに向かうバスの中で震災に遭った。「私は内陸部なので大丈夫でしたが、友人や親戚の家が流されました。ボランティアもして被害状況を目の当たりにしましたが、私たちは普通に生きているのに、という思いを強く持ちました。でも、スポーツの力は無限大です。私たちが活躍すれば喜んでくれる人が県内に大勢います」

 3年後には岩手国体が開催される。復興を象徴する大会とするために、岩手県選手たちは走り続ける。