2009年世界選手権(ドイツ・ベルリン)男子やり投げ銅メダルの村上幸史(30=スズキ浜松AC)が、おきて破りの多投練習で世界に挑む。日本陸上連盟は8日、都内でスーパー陸上競技大会2010川崎(19日・川崎市等々力陸上競技場)の会見を行った。村上は、投てき競技としてタブーとされる連投で、基礎を固めるのと同時にメンタル面も強化。ライバルで08年北京五輪銅メダルのテロ・ピトカマキ(27)を迎え撃つ。男子100メートルでは白人初の9秒台をマークしたルメートル(20)、女子走り高跳びには07、09年世界陸上金メダルのブラシッチ(27)らが出場する。

 村上の今年最大のテーマは自己ベストの85メートルの投てきだ。その目標をスーパー陸上に設定した。「スーパー陸上は、そういう記録を狙っていける場所。目標をしっかりクリアしたい」。85メートル超えとなれば、昨年の世界選手権で1度勝っているピトカマキを再び下し、優勝も十分可能となる。

 今年6月の日本選手権で、男子ハンマー投げの室伏広治の16連覇に次ぐ11連覇を達成した。最終6投目に同大会自身初の80メートル超えを達成した。その勢いで、6月後半から単独で投てき王国のフィンランドに乗り込んだ。しかし、そこで自信は打ちのめされた。

 世界の強豪が出場する投てきだけの2大会に初めて出場した。初戦は76メートル15で8位、2戦目は73メートル74で4位。「何もかもが圧倒された」。国内では、練習でも試合でも、最も遠い距離に村上のやりがあるのが常だった。しかし、フィンランドでは「85メートルラインにポンポンやりが飛ぶ。自分のは最も手前にあった」。

 メンタル面の強化と基礎固めを痛感した。「ここぞという時に力を発揮できるのは気持ち(の問題)」。そこで、ひじなどの関節を痛めるため、投てき競技ではタブーとされる連投を初めて取り入れた。これまでは多くて週3日の投げ込みだった。それを8月に1日休みを挟み、6日間やりを投げ続けた。

 1日25~30本。6日で150本以上を投げた。通常、助走がない立ち投げでも64メートルは届く。それが6日目の1投目は、助走をつけても49メートルしか飛ばなかった。それでも「始めから終わるまで新鮮なものが得られた。距離が出ればいいわけじゃない」。疲労の極地から、どうやって立ち直るかを必死で求めた。

 その成果を、スーパー陸上で打倒ピトカマキにぶつける。「スーパー陸上できっかけをもらって、その先につなげたい。ロンドン(五輪)では体がぶっ壊れようが構わない」。村上の12年ロンドン五輪への道が、おきて破りの連投から広がる。