<陸上:記録会>◇9日(日本時間10日)◇米カリフォルニア州クレアモント

 陸上男子400メートル障害で世界選手権2度銅メダルの為末大(32=a-meme)が、北京五輪以来となる2年8カ月ぶりのレース復帰を果たした。米カリフォルニア州のパノマ大が主催する記録会で、400メートル走に出場。タイムは48秒74と平凡ながら、ケガとの闘いを乗り越えての復帰。侍ハードラーが第一線に戻ってきた。

 走り終えた為末の表情には、心地よい充実感がみなぎっていた。「こうやって競技場に来るのは北京以来。怖さみたいなものがスタートする時にあって。タイムはよくないが、レースして、ゴールできて、本当によかった」。

 北京五輪後は故障続き。特に左膝の痛みに悩み、昨年8月、自らの血小板を患部に注射するPRP治療を受けた。もともと美容整形の技術であり、タイガー・ウッズらも受ける治療法に選手生命を委ねた。「今年だめだったら、もうダメだろうな」と引退が頭をよぎったが、ここ3カ月は完全に痛みが消えた。

 今後は日本に戻り、17日に金沢の記録会でいよいよ400メートル障害に挑む。記録次第で来月3日の静岡国際への出場が決まる。今季は8月の世界選手権での決勝進出が目標。その出場権を得るためには、参加標準記録(A標準49秒40、B標準49秒80)を破り、6月の日本選手権で上位進出が必要だ。大きな目標は、来年のロンドン五輪出場だ。「五輪の決勝を戦うのが夢。その夢を見られそうだというのが、今日でだいぶ感触を得られた」。侍ハードラー復活へ、米国の地から大きな1歩をしるした。【千歳香奈子通信員】