<陸上:セイコー・ゴールデングランプリ川崎>◇8日◇等々力

 男子やり投げの村上幸史(31=スズキ浜松AC)が、「82メートル超3連発」で優勝した。1本目にいきなり82メートル90を記録すると、2本目が82メートル23、3本目も82メートル90。「過去最高」と自画自賛の試技で残り3本をパスし、2位のファーカー(ニュージーランド)らを圧倒した。

 今季にかける村上の思いが、形となった。力みのない軽やかな助走から放たれたやりが、大きなアーチを描いた。80メートルラインを超え、地面に突き刺さった。「どうだ」と言わんばかりに、表情が引き締まった。「相性がいい」という等々力で、いきなり82メートル90のスタートだ。

 これで完全に勢いに乗った。ライバルのファーカーを尻目に、2本目も82メートル23、さらに3本目で再び82メートル90。圧倒的な強さを見せつけ、4本目以降の3本は腰の違和感もあってパス。09年世界選手権銅メダリストの貫禄を見せつけ、優勝をもぎ取った。

 村上

 今日は不思議なくらい、力が抜けていた。3本まとめて80メートルを超えたのは初めて。今までで一番いい入り方をした。特に1投目はこれまでの競技人生で一番よかった。これで今日はいける、と思った。

 4月24日の日本選抜和歌山大会が今季初戦。「自己ベスト(83メートル15)を超える85メートル台を狙う」と公言したが、80メートル38止まり。「力んで投げ急いだ。その反省もあり、今日はぎりぎりまで待って投げた。初戦の失敗をうまく糧にできた」としてやったりの表情。和歌山大会後は一切やりを持たず、ノースロー調整で気持ちの中に「投げたい」という爆発的な思いをためた。

 今季のテーマは、再現力だ。「どんな状態にあっても心身をしっかりコントロールし、いつでも80メートル台を投げる」ことを念頭に置く。その心は、好不調の波に左右されなければ、世界舞台でもおのずと結果は付いてくるという考えから。09年世界選手権に続くメダルをにらみ、「高いレベルでの安定感」を目指す。

 この日の「82メートル超3連発」で、85メートル台も目前に迫った。「底力は100%ついた。85メートルラインを超えるのを後は信じて待つだけ。今日がきっかけになる」。今季の自分を表す漢字として「勢」を掲げた村上。等々力から世界選手権が行われる韓国・大邱へ、大きな弾みがついた。【佐藤隆志】