<陸上:日本選手権>◇初日◇10日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場

 男子400メートル障害の為末大(33=a-meme)が、4年ぶりの世界選手権出場に王手をかけた。予選3組で50秒32の1位でゴール。各組上位2選手&記録上位2選手のファイナリスト8人に名前を連ねた。08年北京五輪から2年半のブランクを経て、今日11日の決勝で侍ハードラー復活をかける。

 第6レーンの為末は、前半から飛び出した。身長170センチながら、刀の居合抜きを思わせる鋭いハードリング。取り囲む7人の「刺客」を寄せ付けず、トップで10台目までクリアした。ラストの直線で安部(中京大)に追い込まれながら0秒01差かわし、50秒32のタイムでゴール。3年ぶりの出場となった日本選手権で、まずは確実にファイナリストの座を手にした。

 為末

 50秒0を考えていたので、タイムはよくない。さらっとゴールできるかなと思いましたが、踏ん張れなかった。楽に走る走り方がうまくできなかった。

 走り終えた直後の言葉は、反省の弁ばかり。それでも49秒89で走った5月3日の静岡国際よりも体調はすこぶるいい。「予選を練習の代わりにしました。これで一晩眠れば、足(の筋肉)もバーンと張って、今日よりも何%増しにもなる」。翌日の決勝に向け、体のコンディションは整った。

 北京五輪後は故障に悩まされ、今春2年半ぶりにレースに復帰したばかりだ。この日の記録は決勝8選手中7番目。それでも「決勝は違ったレースになる」と焦りはない。3年前の日本選手権は8人中最下位の持ちタイムながら優勝し、北京切符をつかんだ。05年の世界選手権ヘルシンキ大会も同じく最下位の持ちタイムながら、風雨にさらされた決勝で下馬評を覆しての銅メダル。逆境での勝負強さは、言うまでもない。

 11日の天気は雨模様。本命・成迫が予選落ちする下克上の400メートル障害にあって「雨でも嵐でも来い、です。戦い方はいろいろあるけど、行くしかない。本気で勝ちに行く」。百戦錬磨の男のハートに、火がついた。【佐藤隆志】