ロンドン五輪男子マラソン日本代表・藤原新(30=東京陸協)が14日、都内で東京マラソンの日本人トップの副賞「ニューBMW328iセダン」の贈呈式に出席した。あこがれの高級車を前に、表情は崩れっぱなし。そして「アラタ節」がさく裂した。

 藤原

 東京マラソンでゴールしたものの、BMW328が目の前に来るまでゴールした気分になってなかった。やっとゴールしました。(東京の)スタートラインに立つまで、常に(車が)頭の中にありました。あの苦しいハードトレーニングを思い出します。

 時価586万円に「ニンマリします」。くしくも藤原が産声を上げた1981年9月、日本のBMW社も誕生した。「高校の監督、大学の監督もBMWに乗っていた。人生の要所でBMWが登場してくる」。昨秋に所属先との契約が打ち切られ、現在は3食風呂付きの国立スポーツ科学センターで宿舎暮らし。自らをプロではなく「プータロー」と自虐的に言う男は、「今までの人生で一番幸せ」と笑いを誘った。

 野山を走るクロカン練習で足回りを鍛えるため、4月は米西海岸で約1カ月間の合宿。何ともゴージャスな話だが「僕の挑戦を『おもしろい』と言ってくれる方がタダで(施設を)貸してくれました」と説明。貯金を切り崩す生活は変わらず「カツカツです」。この日初めて、五輪の目標として「色は分かりませんがメダルを取りたい」と宣言。陸上界の異端児が、完全に日本マラソンの顔となった。【佐藤隆志】