カンボジア国籍を取得してロンドン五輪マラソン代表に選ばれながら、出場危機にあるタレント猫ひろし(34)が、さらに追いつめられた。同国代表の座を争っていたヘム・ブンティンが15日のパリ・マラソンで、猫の記録を7分近く上回る自己記録更新の2時間23分29秒をマーク。五輪参加標準記録の突破はならなかったが、国際陸上競技連盟による参加資格への疑問視の声に続き、さらに状況は不利になった。猫はこの日、都内でイベントに参加したが、困惑の表情を見せたままノーコメントだった。

 猫は15日夜、東京・日比谷で行われたライブイベントに参加した。12日に国際陸上競技連盟が参加資格を疑問視し、カンボジア陸連などに説明を求めていることが判明してから、わずか3日後。会場入りする際、日刊スポーツの直撃取材を受けると、言葉に窮した様子を見せた。

 ライブ開始から40分ほどが過ぎ、この日出演した氣志團のファンが歓声を上げる通用口の脇をこっそり通り抜けようとする、目深に帽子をかぶった小さな影があった。猫だった。付近にいた一般人の誰もが気付かないほど、オーラが感じられなかった。

 記者から「お話を聞かせてください」と声を掛けられると、一瞬おびえたような表情を見せた。「ちょっと今は…、はい」とだけ答え、会場内に入った。ステージに立つまでの間、関係者と談笑しつつも、視線を落とし不安げな顔でメールを打つ姿も見られた。

 国際陸連は、過去に国際競技会で代表経験がない選手についても、国籍取得後1年が経過していない場合は<1>連続した1年の居住実績<2>国際陸連理事会による特例承認のいずれかが必要とした。猫は居住実績がない可能性が高く、特例が認められるにはカンボジア陸連の申請が必要だが、国際陸連関係者は疑問視している。

 こうした状況の中、パリではこの日、ブンティンが激走した。猫のイベント出演とほぼ同時間帯に、猫がカンボジア・オリンピック連盟を納得させた2時間30分26秒を7分近く上回る記録をたたき出していた。

 そんなことを知ってか知らずか、猫はステージで、はじけまくっていた。12分ほどの出番だったが、「幸せって何だっけ、何だっけ…金、女、セックス」などと持ちネタ(?)を連発。重ねばきしたパンツを客の頭にかぶせたりしてはしゃぎ回った。ただ肝心の五輪問題については、一言も触れなかった。