<エジプト国際マラソン>◇18日◇エジプト・ルクソール

 招待選手として出場した11年世界陸上代表の川内優輝(25=埼玉県庁)が、2時間12分24秒の大会新記録で優勝した。

 埼玉県内の自宅で吉報に触れた母美加さん(48)は、安堵(あんど)の言葉を口にした。「ハラハラしました。体が心配で無事に走っているのだろうかって」。遠征に出かけるといっさい連絡がないため、インターネットで情報を収集。午後8時すぎに一報を見つけ「パスポートの件がなければ、手放しで喜べるんですが。今回はたくさんの方にご迷惑かけましたから」。申し訳なさそうに話した。

 母のアシストがあっての優勝だった。悲痛な叫びを受け、自宅に置き去りにされたパスポートを手に成田へと急いだ。そのかいあって、奇跡的に別の航空便で出国ができた。「よくほかの飛行機があったものですね。エジプト政府から招かれて行けなかったら責任を感じて仕事を辞めていたかも…」。“公務員”ランナーの肩書を辛うじて守った。

 今回の大会は賞金が出ず、片道の航空券代は自腹で支払うハメに。それでも美加さんは「本人も懲りているのでもう責められない。ただ、いろんな意味で一生忘れられないマラソンになったと思います」。その言葉には実感がこもった。