<陸上・日本グランプリシリーズ第3戦:織田幹雄記念国際陸上競技大会兼世界選手権代表選考会>◇最終日◇29日◇エディオンスタジアム広島◇男子100メートル

 17歳の桐生祥秀(よしひで=京都・洛南高3年)が日本歴代2位の10秒01をマークした。日本記録保持者の伊東浩司・日本陸上競技連盟短距離部長(43)や、08年北京五輪男子400メートルリレー銅メダルの朝原宣治氏(40)も桐生の将来性を高く評価した。

 超スーパー高校生の出現を、かつて9秒台を待望された「ビッグ2」も手放しで喜んだ。予選終了時点で「68年メキシコ五輪で9秒台が出て四十数年。遅すぎたかも」と、決勝での9秒台を確信していたのは日本陸連の伊東短距離部長。98年バンコク・アジア大会で10秒00の日本記録を出した。

 「まさか破られるのが高校生とは夢にも思わなかった」とすっかり観念?

 の様子だった。「いいメンバーが決勝に残ったぞ」と言うと桐生は「(10秒)0台で行けると思います」と話す強心臓ぶり。「仮に決勝で9秒台で出なくても」の前提で「8月にピークを合わせてこのタイム。今年中に9秒台が100%出るのは間違いない」と太鼓判を押した。

 大阪ガス陸上部コーチの朝原氏は、日本歴代2位の座を0秒01差で奪われた。桐生の走りを「エネルギーをうまく使いながら5速あれば、うまくギアチェンジして5速を使う」と評価。昨年ロンドン五輪5位入賞の400メートルリレーメンバー4人がそろったハイレベルの決勝に「高校生に刺激を受けるのは何だけど、10秒0台がスタンダードになればリレーでメダルを目指せる」。有望な高校生が卒業後に伸び悩む過去から「これまでの常識を覆してほしい」と期待した。

 94年の日本選手権男子200メートル決勝で、2人は高校生に苦杯をなめた。「あの時から男子短距離が劇的に変わった。今日という日は意味合いが大きい」と伊東部長。ターニングポイントになるかどうかは、桐生はじめ若手の双肩にかかっている。【渡辺佳彦】