<陸上:釧路湿原マラソン>◇28日◇釧路市民陸上競技場発着◇30キロの部ほか

 積極性ってまやかしでしょ!

 公務員ランナー川内優輝(26=埼玉県庁)が、世界選手権(8月10日開幕、モスクワ)前最後の調整レースを大会新記録で締めた。順位のつかない招待選手として参加し、自らの記録を27秒更新する1時間33分27秒で1着フィニッシュ。同選手権初出場だった11年韓国・大邱大会は5キロで先頭に立ったが18位に終わった。「積極的に走ったって意味ない」と、2度目の今回はレース展開を見極めた上で結果にこだわる。

 最後の調整レースも全力だった。川内は、気温27度の中で顔をゆがめて30キロを1人旅で押し切った。1時間33分27秒の大会新フィニッシュ。ゴール後は倒れ込むことなく控室に戻った。

 「最後に帳尻合わせができてよかった。ぎりぎり80点。いい気分で(世界選手権に)行ける」

 前走だった21日の北海道・士別ハーフマラソンは22位。「2回続けて失敗すると不安になる。レース前までは愛想も悪かった」と、前日27日は言葉少なだった。しかし、この日のレース後は重圧から解放され、気軽にファンの握手に応じて、自分の等身大パネルとも記念撮影。旧暦の七夕を祝う短冊には「世界選手権6位入賞」と目標を書き込んだ。

 これで世界選手権のマラソン代表決定から10レースを消化した。次は2度目の大舞台。マラソンの常識を覆す男は初出場で18位だった11年大邱大会の屈辱を早口で振り返った。

 「世界選手権は緊張しすぎるとつぶれる。2年前に僕は5キロを世界トップで通過した。日本人は前を走らないとか積極性がないとか言われるので。でもその積極性は誰も買ってくれなかった。皆、忘れている。ゴールの順位が大事で、積極性も何もない。積極的に走ったって意味ない。それは2年前に分かりました」

 雪辱の舞台では集団の中で力をためる。「(勝負は)誰かが仕掛けてばらけてから」と多くの実戦で磨き上げた勝負勘が武器だ。モスクワは8月平均最高気温22度で「僕は寒ければ寒いほど強い。10度を切ってくれば、やる気が体の中からみなぎる」と真夏の冬将軍到来も期待。川内がモスクワで世界最強の市民ランナーを目指す。【益田一弘】