<陸上:出雲駅伝>◇6区間(出雲大社前~出雲ドーム前、44・5キロ)◇14日◇島根・出雲市

 年度3冠の権利を常勝軍団・駒大がつかんだ。1区の中村匠吾(3年)が区間賞で流れをつみ、3区の村山謙太(3年)が区間新記録の快走で独走態勢を盤石に。最後までトップの座を譲らぬ完璧なレース運びで、2時間9分11秒の大会新記録をマーク。15年ぶり3度目の優勝で、大学3大駅伝の開幕戦を制した。V候補の東洋大は、序盤の失速が響き1分6秒遅れの2位。今年の箱根駅伝を制した日体大が3位だった。

 神の国でトラウマを消した。それを確信すると、後は「目標の人」と言う駒大の先輩・宇賀地(コニカミノルタ)が4年前に出した区間記録への挑戦。それさえも村山は、涼しげな顔で12秒更新した。出雲は一昨年13位、昨年が9位。「明日ダメだったら来年はないな」と前夜、告げられた大八木監督の前で快走し「後輩が頑張っていたし自分も区間新で(出雲に)リベンジできました」と笑った。

 中村が後続に20秒差をつけ、2区のルーキー中谷も25秒差に広げた。ただライバル東洋大には、設楽兄弟の2枚エースが控える。盤石の勝利には、その差を広げたいところ。チームの思いを託された村山は、後続を視界から完全に消す38秒差に広げる。ライバルを戦意喪失させ勝負を決めた。

 たたき上げだ。宮城・明成高時代は無名選手。「成長できるし、卒業後の成長も考えてくださる。熱意もです」と大八木監督に発掘され入学。ユニバーシアードで日の丸を背負うまでに成長した。高校卒業直後の2年前の3月11日。東日本大震災で級友の姉が亡くなった。そんな悲しみも乗り越え、故郷の思いも背負いながら疾走した。

 雪辱を果たしたのは、1区の中村も同じ。1度目は様子見、2度目の仕掛けで日体大・服部ら後続を振り切った。「自分の区間で差をつけないと起用された意味がない」。昨年は股関節を痛め出場できなかった出雲。今夏、ユニバーシアードのハーフマラソン銅メダルの力を見せつけた。

 中村、村山、油布、そしてアンカーの窪田。4枚看板が短い距離の出雲路をミスなくつなぐ。勝利は必然のものだった。「先行逃げ切りの95点。そつなく勝てました」と大八木監督。選手層の厚さは文句なし。距離も延び、メンバー編成も増える11月の全日本、来年1月の箱根の3冠に向け、追い風は駒大に吹いた。【渡辺佳彦】