<陸上:日本選手権兼アジア大会代表選考会>◇第2日◇7日◇福島市とうほう・みんなのスタジアム◇男子100メートル予選

 男子100メートルで日本初の9秒台を狙う桐生祥秀(18=東洋大)が、今日8日に快挙を達成するムードが高まった。追い風1・4メートルの予選でラスト20メートルを流して10秒15をマーク。雨をものともせず全体のトップで予選を通過した。5月17日の関東インカレで10秒05を出した勢いを持続し、今日8日、初の日本王者に照準を定めた。予選から好タイムをたたき出し、9秒台突入は秒読み段階に入った。

 もはや10秒15では喜ばない。桐生は「予選なのでケガをしなければいい、スタートも遅れずに出ればいいと思った」。最後20メートルは横目で順位を2度確認し、力を抜いた。安全運転での10秒15を冷静に振り返った。

 5月28日に世界リレー選手権(バハマ)から帰国。疲労回復を優先し、スターティングブロックを使った練習はなかった。“ぶっつけ本番”で、全体の2位だった大瀬戸に0秒11の大差をつけた。激しい雨だったが「慣れているので大丈夫。雨は集中できる」とにっこりと笑った。

 土江コーチは「レース前の集中度は30%ぐらい」と言った。今の桐生は、本気モードでなくてもタイムが出る。今季は4月29日に10秒10、5月17日に10秒05。レースを重ねて走りを修正してタイムを上げるタイプ。今日8日の準決勝と決勝で9秒台が出ても、不思議はない。同コーチは「決勝では、いずれにせよ自己ベスト(10秒01)に近いタイムで走ると思う」。

 桐生も「決勝ではタイムを上げたい」と手応え十分だ。昨年は山県に負けて2位。ちょうど1年後となる8日に「ジェット桐生」が陸上界の悲願である10秒の壁を破る。【益田一弘】