<箱根駅伝予選会>◇18日◇陸上自衛隊立川駐屯地-国営昭和記念公園(20キロ)

 伝統のたすきが、つながった。苦戦が予想された名門・中大が10時間11分37秒の7位で、上位10校が進む来年1月2、3日の本戦出場を決めた。複数の主軸を欠きながら、チームトップのエース新庄翔太(4年)らが底力を発揮。連続出場回数を「86」に伸ばした。

 順位発表の運命の瞬間。それは1年前とは、少しばかり違っていた。瞳を閉じ祈るように待った1年前は腹の底から、こみ上げる歓喜が爆発。今回のトーンは落ち着いていた。事前のデータ集計で、余裕の通過は確実視されていたこともある。「今日は本戦に向けての通過点ですから」。何より新庄の言葉が、伝統のプライドを物語っていた。

 主将の永井に三宅、藤井といった主軸を調整不良や故障で欠いた。それでも29日間にわたる4度の夏合宿で得た自信は、確信に変わっていた。5キロごとのラップで、序盤から上位をキープ。浦田監督が「積極的に行くように言ったが、オーバーペースではと思うぐらい」の走りで不安を吹き飛ばす。18キロ地点で画用紙に順位を書き、選手を鼓舞した永井も「みんなの力強そうな顔を見て安心した」と胸をなで下ろした。

 前回まで85回連続88回出場し、14回の総合優勝。いずれも最多を誇る名門の重圧に、選手は負けなかった。9月中旬に左膝を痛めて欠場した永井は「否定的な言葉は絶対に使わない」ことをミーティングで徹底した。

 その永井に「箱根では走ってもらうから予選会は絶対に通過する」と誓ったのは新庄。3月には左膝を痛め、6月の全日本予選は落選したが「下馬評もあるけど絶対に見返してやろうと思った。そのためには自分の走る後ろ姿でチームを引っ張る」とエースの自覚を胸に刻んだ。眠れぬ夜もあった。伝統の重みに、つぶされかけもした。呪縛から解き放たれた名門に、捲土(けんど)重来の箱根路が待っている。【渡辺佳彦】