<横浜国際女子マラソン>◇16日◇山下公園発着(42・195キロ)

 マラソン2度目の田中智美(26=第一生命)がラスト勝負を制し、2時間26分57秒で「横浜最後の女王」に輝いた。

 ぶれない意思が歓喜を導く。オンゴリ(ケニア)との優勝争いは、ラスト300メートルの直線勝負に持ち込まれた。田中は1度は抜き返されたが諦めない。「日本人が優勝して最後の大会を締める」との強い思いで懸命に腕を振る。ラスト50メートルで抜き返し、大会最後のゴールテープを切った。

 半月前までは出場すら危ぶまれていた。7月22日から約1カ月、ナショナルチームの米合宿に参加。野口みずき、福士加代子ら実績ある選手の練習ペースについていけず、疲労はたまり、自信も喪失した。帰国後も不調は続く。山下監督からは「マラソンどころか駅伝のメンバーにも入らない」と怒られ、号泣した。

 周囲にも「マラソンが怖い」と漏らしたが、マラソン練習は続けた。中学、高校時代は県大会止まりの無名。玉川大では陸上部の入部も断られながら、翌日に再度、部室を訪ねて入部を直訴した反骨心を持つ。「落ち込んで崩れたらそこまでの子。何くそと向かってきてくれた」と山下監督。出場のゴーサインが出されたのは先月下旬だった。

 3月の名古屋に続く、2度目のマラソンで優勝。田中は「うまくいかず出場を諦めようと思ったこともあったけど、強い気持ちがあれば勝てる」と自信を得た。世界選手権メダリストの尾崎好美の元練習パートナー。山下監督は「リオデジャネイロ五輪が完成の子ではない。東京五輪もある」と、教え子の大きな可能性を実感した。【田口潤】