20年東京五輪まであと2000日となった。陸上男子100メートルで日本歴代2位の10秒01を持つ桐生祥秀(19=東洋大)は1月31日、大阪市内の大阪成蹊(せいけい)大でシンポジウムに参加。東京の主役候補は10秒01を「こんな記録、超えてやると思っている」。けが続きの昨季からの復活を誓った。今年は世界選手権(8月、北京)決勝進出を大目標に掲げ、東京までの2000日を歩み始める。

 平然とした顔で、大胆不敵な言葉を口にした。桐生が、日本を背負う緊張について質問された時だった。「まだ日本を背負うという感覚はないです。僕は9秒台どころか、10秒台。日本記録よりもまだまだ出せると思っている。こんな記録、超えてやると思っているので、緊張してない」。

 シンポジウムで司会を務めていた日本記録10秒00を持つ伊東浩司氏は「こんな記録っていわれた…」と勘違いして苦笑い。もちろん桐生が「こんな記録」と表現したのは自己ベストの10秒01のことだ。19歳は「10秒00じゃないですよ」と慌てて口にしたが、自己ベスト更新の手応えがある。

 東京五輪まで残り2000日。桐生が掲げる最大の目標は五輪ファイナリストになること。その第1歩として、今年の目標は、世界選手権北京大会での決勝進出だ。「ファイナリストになれたら最高です」。

 簡単ではないことは百も承知だ。13年の同モスクワ大会では10秒00で準決勝敗退の選手がいた。「決勝には9秒台は必要なタイム。9秒台を出しても次が10秒1台ではまぐれ。世界大会で10秒0台をきっちり出せるように」。そのためにも「こんな記録」=10秒01で足踏みはしていられない。

 シンポジウムでは伊東氏から金言も授かった。「ウオーミングアップが単調で硬い。もう少しやり方を考えれば、簡単にタイムは出る」。桐生は、約40分のアップで15分をストレッチに使う。「アップで動きを増やします」と耳を傾けた。

 今季の100メートル初戦は、織田記念(4月18、19日、広島)を予定。今オフはウエートトレーニングを本格導入。「けがの予防ですが、下半身が大きくなった気がする。ムキムキになろうかな」とにやり。「マッチョ桐生」が自慢のジェット噴射で「こんな記録」とおさらばする。【益田一弘】

 ◆桐生の予定

 今季最初のレースは、テキサスリレー(3月25~28日、米テキサス州)で、400メートルリレーに出場。3週間後に織田記念(4月18、19日、広島)で注目の100メートル初戦を迎える予定。13年に10秒01を出した大会で世界選手権の参加標準記録(10秒16)のクリアを狙う。その後はリオ五輪出場枠がかかる世界リレー選手権(5月2、3日、バハマ)の見通し。