<陸上世界選手権>◇第1日◇10日◇モスクワ・ルジニキスタジアム発着特設コース◇女子マラソン

 五輪女王が、再び悲劇に見舞われた。04年アテネ五輪金メダリスト野口みずき(35=シスメックス)は、30キロ手前でストップするアクシデント。何度も走りだしたが33キロ付近で、無念の棄権となった。

 30キロ手前。野口が突然、止まった。両太ももを必死でたたき、涙目の自分を鼓舞する。ジョギング程度の速さで走りだし、歩いてはまた止まる。壮絶なシーンを何度も繰り返した後の33キロ付近。日本陸連の宗猛コーチに止められ「どん底からはい上がり伝説になる」と語っていた五輪女王の挑戦は、幕を下ろした。

 救急車でスタジアムに搬送され医務室へ。対応した真鍋ドクターは「軽い熱中症。水分補給して回復しています。意識も応答もしっかりしていて、座って話すことは出来ます」と説明。血圧や体温に異常はなく、点滴を打つこともないという。ただ、表情については「落ち込んでいる感じはしました」と野口の、無念の胸中を察した。

 「世界舞台に戻って来られてうれしい。出るからには、表彰台を狙う」。つい2日前の記者会見で、そう話して臨んだ10年ぶりの世界選手権。30度近い気温に、7キロ付近で帽子を脱ぎ捨てた。トップとは10キロで4秒差、15キロで17秒差、20キロで37秒差、25キロでは1分17秒差。徐々に引き離された。連覇を期待された08年北京五輪直前に、左足付け根を肉離れして、痛恨の出場辞退。長いブランクを克服した後に、野口が再び世界から厳しさを突きつけられた。