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全日本実業団女子駅伝2016

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吉川美香×小林祐梨子 女子中距離レジェンド対談 前編

 全日本実業団対抗女子駅伝が27日、宮城県松島町文化観光交流館前~仙台市陸上競技場の6区間42・195キロで行われる。1500メートルで日本選手権5連覇し、12年ロンドン五輪陸上女子長距離代表の吉川美香(32)と、1500メートルの日本記録保持者で、08年の北京五輪代表の小林祐梨子(27)の女子中長距離界のレジェンド対談が実現。同駅伝との縁も深い2人に見どころや優勝予想、思い出を語り尽くしてもらった。(敬称略)

06年日本選手権デッドヒートの裏側

--名勝負を繰り広げたライバル同士の対談は、思わぬ形から和やかに幕開けした。2人の再会は、吉川の引退レースとなった13年の全国都道府県対抗女子駅伝以来4年ぶり。インタビュールームに吉川は6月に出産したばかりの第2子となる女の子・明莉ちゃんを大事そうに抱っこして入ってきた。

2児の母となった吉川
2児の母となった吉川

小林 (赤ちゃん)かわいい。吉川さんも全然変わってない。お子さんが2人いると知っていたので、もっと変わると思ってましたけど若々しい。私もこうありたいです。

吉川 祐梨子ちゃんも髪が長くなって女性らしくなった。何かドキドキします。

--母から離れて、横になっていた明莉ちゃんの泣き声が部屋に響く中、引退後、妻となった2人の会話は現役時代にシフトする。小林は兵庫・須磨学園高時代から「スーパー女子高生」として注目された。一方、吉川は中学や高校時代は全国的には無名の存在だった。吉川が強烈に小林を意識するようになったのは、パナソニックに所属していた05年の日本選手権だった。

吉川 05年の日本選手権の1500メートルでは4位でした。表彰台に上れなくて悔しかった。その時に祐梨子ちゃんが表彰台の一番上にいた。スーパー高校生(高2)とはいえ年下に負けていられない。しっかりとあそこを目指そうと。

小林 (当時の)私は高校2年で、周りのことを分からないままでやってましたね(笑い)

吉川 その時の祐梨子ちゃんはライバルということでなく、憧れの存在でした。だからこそ目標として06年はライバルとなれるようにしようと思っていました。

--続く06年の日本選手権の1500メートル決勝。2人は最後の直線でデッドヒートを演じた。写真判定の末、吉川は優勝を飾るとそこから5連覇を達成する。

現役時代の話を熱く語る小林
現役時代の話を熱く語る小林

吉川 監督からラスト300メートルが勝負と言われ、練習では(仮想小林選手を想定して)『小林はここにいるぞ』とあおられてました。挑戦者なので、ぶつかっていくだけだという思いをラスト300メートルにぶつけました。

小林 あのレースは私のターニングポイントでもあるんです。ラストが強いと自覚していたのにラストの直線で負けた。実は恐怖症になりました。不思議なんですよね。練習ではラストすごく上がるんですけど、試合だと体が止まっちゃう。他の選手も経験あると思うのですけど、トラウマ(心的外傷)になって、トップスピードで走れなくなってしまいました。体が固まってしまうようになりました。

--同年の大会は小林の地元の兵庫(ユニバー記念競技場)での開催だった。

吉川 ゴールした後は、祐梨子ちゃんの地元での開催なので何か投げられるんじゃないかと冷や冷やしましたね(笑い)。

小林 正直、めっちゃプレッシャーありました。インターハイとはレベルも違う。前回優勝していた。優勝も狙っていた。気持ちもいっぱいいっぱいでメンタル的にも強いわけではなかった。怖い感じでした。

吉川「実業団駅伝は楽しみな1日」

--実業団チームナンバー1を決める全日本実業団対抗女子駅伝。吉川は現役時代にパナソニックで、小林は豊田自動織機で出場した。

2012年陸上日本選手権・初日・女子1万メートル決勝 31分28秒71で優勝を決めた吉川美香=2012年6月8日、大阪・長居陸上競技場
2012年陸上日本選手権・初日・女子1万メートル決勝 31分28秒71で優勝を決めた吉川美香=2012年6月8日、大阪・長居陸上競技場

吉川 陸上って個人競技で孤独な部分もある。駅伝は一体となってチームで戦うことができるのが楽しい。一つの成績に対して、みんなで喜べる。1年に1度の全日本実業団対抗女子駅伝が集大成であり、自分の中で楽しみな1日だった。

小林 実業団のレースの中で一番注目されているのがこのレース。初めて走った時に、ここまで社員の方が応援にくるのかと。各企業のカラーに競技場のスタンドが染まるのを見て驚きました。

 

--2人は12年に同駅伝の3区で直接対決している。その時は同じ3区に渋井陽子(三井住友海上)福士加代子(ワコール)が出場。得意距離の枠を超えたそうそうたる顔触れの共演だった。4人の中では小林が最初にタスキを受け取り、そこから7秒差で渋井、さらに2秒差で福士、そして16秒差で吉川がスタートした。

小林 現役の時では一番長い距離(10・8キロ)だったからめちゃくちゃ不安でした。でも、タスキをもらった順位が、福士さんと渋井さんとほとんど同じで、しゃべりながらだった。『しんどい?』『疲れた?』『誰行く?』って。それで、あの渋井さんが『ペース早い。めっちゃしんどい』って落ちた。おもしろい10・8キロだったな。

吉川 いいな~祐梨子ちゃん。福士さん、渋井さんと日本記録保持者3人(小林が1500メートル、福士が5000メートル、渋井が1万メートルの保持者)が一緒に走ってるのに、何で私はそこに入れないのって(笑い)。その後タスキが来た時、あの集団に追いつきたい。あの集団の中で走れたらどんだけ楽しいんだろうと後ろから見てた。マラソンと1500メートル、5000メートルのトラックの人はなかなか一緒にレースしない。いつもは一緒に走れない面々のメンバーが集結して、走ることができるワクワク感が楽しかった。こんなに楽しいレースがあるかと思いましたね。

 結局、福士が11位から9つ順位を上げて2番目に、小林は8位から4つ順位を上げて4番目に、そして渋井は順位をキープして10番目にタスキを次につないだ。吉川も大健闘し17位から9つ順位を上げ区間5位の快走を見せた。

--小林は14年の全日本実業団対抗女子駅伝で引退を決意する。

2010年国際グランプリ大阪大会・女子5000メートル 15分31秒72で5位の小林祐梨子(撮影・田崎高広)=2010年5月8日、大阪・長居陸上競技場
2010年国際グランプリ大阪大会・女子5000メートル 15分31秒72で5位の小林祐梨子(撮影・田崎高広)=2010年5月8日、大阪・長居陸上競技場

小林 アンカーでゴールした時、引退しようと思いましたね。3年間、座骨神経痛で全く走れなかった。最後1年間は歩くのも辛かった。痛すぎて靴下もはけなくて、3分も座れないんですよ。ホントに空気椅子でご飯食べていた(笑い)。15年は世界陸上も五輪もなくて目標が見つからなかった。だからかな。全日本実業団対抗女子駅伝に照準を合わせようと思いました。すると、真っ暗な道を進んでいた中で、光が見えて、走りだした感じ。何とか走れるようになって、最後に自分の思うような走りができたら辞めよう。思えなかったら続けようと思ったんです。すると(アンカーの6区で走った)ラスト100メートルすごく走れた。久々にラストスパートができた。「めっちゃ楽しい。だから辞めよう」と思いました(笑い)。自分の中でリハビリとかがすごくしんどかったから、楽しいと思った時に辞めたかった。その1年前は嫌で辞めようと思ったんですけど、あの時辞めなくてよかった。もし1年前に辞めていたら陸上に関わる仕事は絶対してないですから。

 小林は最終区(6.795キロ)を区間8位の21分37秒で走り、順位を1つ上げてチームの4位入賞に貢献し陸上生活に幕を引いた。

優勝候補は吉川、小林ともに第一生命を予想

--全日本実業団女子駅伝ではデンソーが3連覇中。優勝候補を挙げてもらった。

小林 第一生命かな。粒がそろっている。長い距離を走れる人、(上原美幸、田中智美ら)オリンピアンもいる。安定しているので外さないと思う。デンソーも(リオ五輪10000メートル代表の)高島が抜けたけど強いですね。ユニバーサルエンターテインメントは個々の選手は強いけど駅伝になると分からないですね。抜きんでたチームがないという印象です。

吉川 優勝となると、私も戦力的には第一生命が固いかなと。タフな選手がいるという点でも強い。デンソーも勝ち方を知っているチームかなと思うんです。層が厚いのはヤマダ電機。TOTOも若手の勢いがありますね。

--レースのポイントを聞いた。

小林 1区は高低差があって体力を使うコースです。前半トップ集団にいられるチームが勝つ。3区まででどれだけ前にいけるかですね。

吉川 やっぱり1区でどれだけたくましい選手を用意できるかだよね。それがチームの順位に関わってくる。1区と2区の組み合わせは夫婦のようなもの。この2区間でどう3区に持って行けるか。スタートダッシュに失敗して上に上がれることはまずないと思います。

--同駅伝の出場選手へメッセージを語った。

小林 女子の駅伝は男子の駅伝に比べると面白みが欠けると言われるので、ガッツのある走りをして欲しいです(笑い)。今、無難なんですよ。もちろん会社は背負ってますけど、オリンピックとか世界選手権には関係ない大会なので「もう1歩前に走ったろ」と殻を破って欲しいですね。

吉川 今回はオリンピックの年の駅伝。自分の強みを見つけるスタートラインにして欲しいですね。長所と課題を見つけて「ここからスタートするんだ」という気持ちで走って欲しい。オリンピックの年だからこそ、2020年の東京オリンピックにつながるような走りをして欲しいですね。【取材・構成=上田悠太】

◆吉川美香(よしかわ・みか)
 1984年(昭59)9月16日、神奈川・相模原市生まれ。神奈川・荏田高から03年パナソニック入り。06年から日本選手権1500メートルで5連覇。07年大阪世界選手権1500メートル代表(予選落ち)。12年ロンドン五輪では5000メートルと1万メートルに出場。1500メートルの自己ベストは日本歴代3位の4分10秒00、5000メートルは15分15秒33。13年2月に結婚を発表。現在はパナソニックでコーチを務めながら、2児の子育てに奮闘中。
◆小林祐梨子(こばやし・ゆりこ)
 1988年(昭63)12月12日、兵庫県小野市生まれ。兵庫・旭丘中1年から本格的に始める。須磨学園高時代の06年5月、国際GP大阪大会で4分7秒86と1500メートルの日本記録を樹立。08年北京五輪の5000メートルに出場。元陸上選手の男性と約13年の交際を経て16年3月に結婚を発表。現在はテレビ解説や陸上の普及活動を行っている。




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