23日、タレントの香取慎吾さんが、日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)に、寄付金3900万円を贈呈した。自身が描いたパラサポのエントランスの壁画を「NFTアート」として参加者に付与する仕組みで、1点3900円・限定1万点で募集。その収益の全額をパラスポーツ普及の支援金として寄付した。

胸に響いたのが「東京パラリンピックは(開催して)終わりではなく、僕は始まりだと思っています」という香取さん言葉。開催から1年。大会の感動や記憶は薄れ、企業の協賛も縮小傾向にある中、「スポーツを通じた共生社会の実現」という大会のコンセプトに、あらためて光を当てたのだ。

香取さんは稲垣吾郎さん、草なぎ剛さんとともに17年にパラサポのスペシャルサポーターに就任。3人は仕事の合間を縫って、多くの選手との対談や競技体験を重ねた。私も18年に香取さんと車いすテニスの国枝慎吾の「慎吾対談」を企画。そこで聞いた彼の平昌パラリンピックでの体験談は今も鮮明に記憶している。

「障がい者の人がやっているスポーツという見方をしている部分がどこかにあって「頑張って」という気持ちで応援していたんだけど、アイスホッケー会場でふがいないプレーに「何やってんだ!」という厳しいやじが飛んでいたんです。そこから「こうやって楽しんでいいんだ」と思えるようになりました」。

彼の心の中から「障がいがあるのにスポーツをしているから応援したい」という意識が消えて、単純にパラスポーツの競技としての面白さや、アスリートのすごみを、心の底から楽しめるようになったのだと思った。「パラスポーツに本当にたくさんの新しい気持ちをもらえた。だから1人でも多くの人に楽しんでもらいたい」。寄付金の贈呈式での彼の言葉である。

くしくも同じ1周年というタイミングで、大会組織委員会の元理事が、スポンサー選定を巡る受託収賄容疑で逮捕された。紳士服大手AOKIホールディングスに便宜を図り、現金を受け取っていた容疑である。連日のように東京大会の「カネとゆがんだ利権構造」が報じられている最中だけに、今回のスポーツ愛にあふれた無償の支援に心が洗われるようだった。

「次は何をしようかなと思っています。自分はアートもするし歌も歌う。楽しくサポートしていける形をつくっていければ」と、香取さんは3人と一緒に今後もサポート継続を明言した。彼らの「祭りのあと」も変わらぬ支援が、パラスポーツの注目度をさらに高め、競技人口とファンを増やす。それが共生社会の実現につながる。これも東京パラリンピックのレガシーなのだと思った。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「スポーツ百景」)

※草なぎのなぎは弓ヘンに前の旧字体その下に刀