W杯開幕を控えた最後の国際試合の位置付けと評価は難しい。格下の比較的楽な相手を選んで、自信と勢いをつけてW杯に臨むのか。強敵との対戦で“世界基準”を体感させて、残る課題をしぼり出し、本番への緊張感と集中力を高めるのか。監督の方針や哲学、チーム状況によっても変わってくる。

10年南アフリカ大会の日本は後者だった。直前2試合はイングランドとコートジボワール。岡田武史監督は「負けてもいいから強いチームを」と日本協会に要求した。結果は2連敗。2戦目のコートジボワール戦は0-2で内容的にも完敗だった。しかし、この敗戦が本番の快進撃につながる、転機になった。

試合を終えた岡田監督は、中盤の5人をフラットに並べてサイドをカバーする布陣に思い至る。実はコートジボワール戦は90分を戦い終えた後、さらに45分間の3本目があった。そこで新布陣を試して、W杯への手応えをつかんだという。開幕直前に対戦した強敵が、幸運にも“起死回生の策”を気付かせてくれたのだ。

02年日韓大会は開幕直前にスウェーデンに1-1で引き分けた。トルシエ監督が重視したのが、控えGKをのぞく全選手をピッチに立たせること。交代枠10人をすべて使い切った。本番を前に全選手に出場の可能性があることを意識付け、控え選手にもしっかりと実戦感覚をつけさせた。長丁場を全員で戦い抜くというメッセージでもあった。

森保ジャパンが17日のカナダ戦に1-2で敗れた。故障で主力を欠いていたとはいえ、W杯前最後の試合での敗戦にDF吉田麻也は「修正できるところはたくさんある」と語った。確かにセットプレーの対応など課題が多く残ったが、小さなミスが命取りになるW杯という大舞台で、しかもドイツという強豪との初戦を前に、むしろ改善点を再認識できたことは収穫。悔しい敗戦で気持ちも引き締まったはずだ。

開幕まであと2日、ドイツ戦まで5日に迫った。しかし、“まだ”5日ある。カナダ戦の反省を生かして、小さなほころびを1つ1つ修正していけば、新たな発見だってあるかもしれない。あとはいかにコンディションを整えていくか。最後の最後まで、あらゆる手を尽くして悔いのない準備をすれば、勝機も広がってくるはずだ。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「スポーツ百景」)

日本対カナダ カナダに敗れ肩を落とす吉田(撮影・横山健太)
日本対カナダ カナダに敗れ肩を落とす吉田(撮影・横山健太)
日本対カナダ 前半、先制ゴールを決める相馬(撮影・横山健太)
日本対カナダ 前半、先制ゴールを決める相馬(撮影・横山健太)