今回から「世界へ羽ばたくアスリート」と題して、親交のあるアスリートたちにインタビューするシリーズを随時お届けします。

第1弾は、この春早稲田大学に進学する陸上長距離界のホープ山口智規選手です。

山口選手は千葉県銚子市出身で私と同郷。銚子で生まれ育ち、高校は学法石川(福島)へ進みました。中学までは野球少年! 陸上選手になるとは思ってもいなかった山口選手が5000m高校歴代3位の13分35秒16のタイムをたたき出せたプロセスに迫りました。

◇  ◇

学法石川(福島)で急成長した山口智規
学法石川(福島)で急成長した山口智規

--どんな少年だったのですか?

山口 小さい頃から運動が好きで、走ることも好きでした。でも、野球の方が好きで、千葉県匝瑳市の「匝瑳シニア」という硬式野球チームに所属し、ポジションはショートでした。中学生の頃は、火・水は陸上の練習、木・金は硬式野球部の練習、土・日で陸上の大会に出たりしていました。

--陸上に専念した理由は?

山口 高校に進学となった時、野球をやるにはガタイ(体)が小さいと感じるようになったんです。そこで高校からは陸上を頑張っていくと決めました。中学生の頃の陸上の最高成績は関東大会で3位、3000mのベストタイムは8分52秒で全国大会には行けませんでした。


中学まで野球チームに所属していた山口
中学まで野球チームに所属していた山口

--なぜ学法石川に?

山口 父の勧めでした。陸上やるなら学法石川が良いじゃないかと。

--お父さんすごいですね!息子の才能を見抜いていたのかな?

山口 正直、自分でもここまで走れるようになったことに驚いています。高校へ入学する時には「14分台を出せるかな?出したいな」という気持ちでした。13分台は考えもしていませんでした。

--どうなってそんな速くなったんだと思う?

山口 確実に言えるのは、顧問である松田和宏監督の指導力です!僕は陸上のことをほとんど知らずに入学し、故障も多くありましたが、松田監督の出した練習はほとんどこなしてきました。そしたら、自然と速くなっていました。松田監督との出会いがなければここまでタイムが伸びていなかったかな…本当に感謝しています。

--1年時に早くも13分台。何か転機になったレースがあったのですか?

山口 高校1年生の県新人大会で、それまで僕よりはるかに速かった選手に勝てたんです。このレースを経て「もしかしたら、もっといけるかも?」と思うようになりました。そして、その後5000mで13分台が出ました。

--高校歴代記録などを意識したことは? 13分35秒16の好記録を出した時、どんな心境でしたか?

山口 意識はしてなくて…常に自分のベストを尽くす事しか考えていません。13分35秒16を出した時も、走る前に13分35~40秒を目標にスタートラインに立ちました。練習の出来栄えで、自分でもこの記録をターゲットにできるまで走れていて、「いけるかも」と思っていましたし、松田監督にも「いける」と言われていました。実際走っている時は、4000mまでは楽に走れていて、きつくなったのはラスト1000mでした。ラスト1000mは2分39秒だったと思います。ターゲットにしていたタイム通りに走れて、自信になりました。


高校1年時の福島県高校駅伝で走る山口
高校1年時の福島県高校駅伝で走る山口

--大学はなぜ早稲田大学に?

山口 早稲田大学の相良豊監督とお話しした時に、個々の目標を大切にし、自主性を重んじてくださると感じました。そこに惹かれて進学を決めました。

--大学での目標は?

山口 もっと力をつけて箱根駅伝などでチームに貢献したいという目標もあるし、個人としてもトラックレースも頑張りたいです。

--12分台?

山口 いやいやいや…(笑)でも12分台を目指していかないととは思ってはいますが…。まだまだ頑張らなきゃ難しい目標だと思っているので、1歩1歩頑張りたいです。実は、最終的にはマラソンで勝負したいのです。世界的にマラソンのタイムのレベルも日本のレベルも上がっているので、将来マラソンで世界に通用するには5000m12分台、10000mだと26分台で走ることはひとつの目標ではありますが、まだまだ大きな目標すぎます。

--憧れ・目標、ライバルの選手はいますか?

山口 憧れは大迫傑選手です!早稲田大学の先輩でもありますし、日本マラソン界を牽引し、世界に挑戦する姿は本当にカッコいいです。いつか大迫選手のような選手になりたいです。僕はまだ陸上歴が浅くて…なのでライバルの選手とかはいなくて、自分を超えていく事を意識しています。

--将来の夢は?

山口 まだ「オリンピック」とか言える実力がないのですが、将来的にはマラソンで世界と勝負したい気持ちはあります。そのためにまずは大学でチームに貢献できるように力をつけていきたいです。5000mも13分1桁を目指していきます。そして、いつか「マラソン日本代表の山口智規」となれるように努力していきます。

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山口選手は同郷ということで以前から応援していましたが、今回初めて話をしました。「あまり取材を受けたことがなくて…」と初々しさもあり、とても謙虚な選手でした。高校歴代3位の好記録を出しながらも、そのすごさに自分自身が気付いていないので、そこも強みだと感じました。早稲田大学に進学し、どのように化けるのか注目して応援していきたいと思います。(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)