いよいよ今週末、5月14日(土)、15日(日)の2日間にわたり2022ワールドトライアスロンシリーズ横浜大会が開催される。

14日は東京オリンピック・パラリンピック以来となる世界の強豪選手による国内レース。15日はエイジクラス(一般の部)が開催される。横浜が盛り上がることは間違いない。

今回は大会の展望、出場する日本人選手について触れていきたい。

まずは女子から。近年、女子のレースはスイム先行型といわれ、最初の種目スイムでリードした選手が優位にレースを展開することが多い。

キーパーソンは、昨年の東京オリンピックで金メダルに輝いたフローラ・ダフィー選手(バミューダ諸島)。展開によっては、スイムからゴールまでトップを走る「横綱レース」で勝ち切ることもある。

東京オリンピック銀メダリストのジョージア・テイラーブラウン選手(イギリス)、同じくイギリスのジェシカ・リアマンス選手、若手のホープであるテイラー・ニブ選手(アメリカ)がどのような動きをするかにも注目したい。

陸上競技から転向し、スイムのパフォーマンスも高いベス・ポッター選手(イギリス)は非公認ではあるが5キロ14分41秒のタイムを持つ。

上記の選手たちがいる限り、女子のレースはスイム先行型と言い切っても良いと思う。スイムで先行しつつ、バイクは男子選手並みのパフォーマンスなので、いかにスイムを良い位置で上がり、レースの流れに乗れるかが勝負どころだ。


2019年横浜大会に出場した高橋侑子
2019年横浜大会に出場した高橋侑子

日本からは、東京オリンピックに出場した高橋侑子、岸本新菜、経験豊富な井出樹里、佐藤優香、福岡啓、そして横浜大会初出場の酒井美有、池野みのり、中山彩理香の8選手が出場する。

高橋選手を中心にスイムを得意としている選手もいるので、2024年パリオリンピックに向けて日本の女子選手がどのようなパフォーマンスでレースを展開するか注目だ。スイムで好位置につけ、高速化するバイクに対応して上位に食い込むことに期待したい。

一方で、男子は東京オリンピックで金メダルに輝いたクリンティアン・ブルメンフェルト選手(ノルウェー)が主戦場をアイアンマンレースに移した。先週開催された世界最高峰のアイアンマンワールドチャンピオンシップで見事優勝。オリンピックのタイトルの翌年にアイアンマンの世界チャンピオンになるという快挙を成し遂げた。

東京オリンピックまでの男子のレース展開は、ブルメンフェルト選手を筆頭にノルウェー選手のバイクパフォーマンスが高く、スイムで遅れた選手でもノルウェー選手らの力で先頭集団に追いつき、大集団でのランスタートがスタンダードになっていた。しかし今季からカギを握るノルウェー選手がいない。そうなるとレース展開が変わる可能性がある。

3種目で穴のないヴィンセント・ルイ選手(フランス)がレースをコントロールすることは間違いないだろう。そこにスイムの力をつけてきた東京オリンピック銀メダリストのアレックス・イー選手(イギリス)と銅メダリストのヘイデン・ワイルド選手(ニュージーランド)が絡む。スイムアップの位置がポイントになりそうだ。

日本からは、8位入賞を目標としている東京オリンピック代表のニナー賢治、小田倉真、東京オリンピック出場は逃したものの、そこからレベルアップして挑む北條巧、古谷純平、佐藤錬の各選手が参戦。初出場の安松青葉、内田玄太、吉川恭太郎を加えた8選手が世界の強豪と勝負する。


2019年横浜大会に出場したときの北條(右)
2019年横浜大会に出場したときの北條(右)

注目したいのが北條選手だ。東京オリンピック出場は逃したものの、そこからの飛躍はすさまじい。

2021年9月に開催されたワールドチャンピオンシップグランドファイナルエドモントン大会では、名だたる強豪選手に食らいつき、9位に食い込んだ。

その後の10月のワールドカップヘウンデ大会では、田山寛豪選手以来の表彰台(2位)に上がり、さらには今年3月に開催されたヨーロッパトライアスロンカップ(2022/クアルテイラ)で優勝した。

東京オリンピックを逃したことについて彼は「自分の中で成長につながる大きなきっかけになりました。僕の目標はパリ五輪でメダルを取ること。このままではパリ五輪でメダルを取ることはできない、と強く感じました」と話す。

それまでは自分が最善だと思う方法で練習や計画を立てていたが、2021年横浜大会後は「世界で戦うための練習や行動」に意識を変えた。

その後は練習拠点や練習内容も少しずつ変わっていき、レースで発揮できるパフォーマンスは確実にレベルアップしていると本人も自信を持っている。

今回の横浜大会での目標は6位以内。「逃げ集団が形成される可能性が高いと予想しているので、展開によっては表彰台も狙っています!」と力強く語ってくれた。


横浜大会に出場予定の日本男子勢。左から小田倉真、佐藤錬、北條巧、ニナー賢治、古谷純平
横浜大会に出場予定の日本男子勢。左から小田倉真、佐藤錬、北條巧、ニナー賢治、古谷純平

ニナー選手や古谷選手も北條選手と同様に「昨年までとはひと味違うレース展開になるのでは」と予想している。スイムから良い流れに乗れる選手たちは、勝機を手繰り寄せるためにどのようなレース運びをするか注目だ。

男女共に高速レースが期待される今大会で日本人選手の表彰台は見られるのか。

また、同日早朝には、パラトライアスロン大会が開催される。

東京パラリンピック銀メダリストの宇田秀生選手や2022年冬季パラリンピックに出場した佐藤圭一選手ら11人(内、視覚障害者ガイド3人)が参戦する。

ぜひみなさんも日本人選手にエールを送っていただきたい。

3年ぶりの有観客開催となるワールドトライアスロンシリーズ横浜大会。選手にとっても関係者にとっても大きな一歩となる。

週末、横浜の地がトライアスロンで大いに盛り上がるだろう。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)