7月18日の海の日に、私の地元である千葉県銚子市の銚子マリーナ海水浴場で「ビーチクリーン」を行った。

スポーツ以外のイベントを主催するのは初めてだったので、最初は開催への不安や緊張があったが、当日は約90人の方に足を運んでいただき、無事開催することができた。

なぜビーチクリーンを行おうとしたか。

それは、私が2016年から悩まされている「海に入るとじんましんが出てしまう」という症状がきっかけだ。そこから海の環境について真剣に考えるようになった。

結局、じんましんの原因は不明のまま2020年秋に引退をしたが、ある皮膚科の先生からは、汚水が原因の可能性があると言われた。私だけでなく、海と共存する競技者のためにも、もっと海に対して視線を向けていくべきだとずっと思っていた。

銚子マリーナ海水浴場で「ビーチクリーン」を行った
銚子マリーナ海水浴場で「ビーチクリーン」を行った

23日、3年ぶりに開設される銚子マリーナ海水浴場。そこで第1歩を踏み出すことにした。

私は海や水質の専門家ではなく、海に携わるスポーツを愛する1人の元トライアスロン選手だ。この私が出来ること、伝えていくべきことは何だろう、と考えた。その結果決めたのが、この海岸を日ごろから守っている方々やアスリートに協力していただき、銚子市民を始めとする参加者の皆さんとでビーチクリーンを行うこと。その後に千葉科学大学のホールを借りて、環境にまつわる話をしてもらうことだった。

ビーチクリーンで集まったゴミ
ビーチクリーンで集まったゴミ

そして、当日。

小さいお子様からご年配の方まで多くの方に集まっていただき、ビーチクリーンを行う事ができた。初めてビーチクリーンに参加したという小学1年生の男の子が「細かいプラスチックのゴミがたくさんある」ということに気付いた。

私がビーチクリーンを通して伝えたかったことに、ちゃんと気付いてくれた。

「ゴミ拾いをして良いことをする」の先にある、

「なぜゴミが海辺に集まるのか」

「どんなゴミが多いのか」

「日常生活でどのようにしたらこのゴミが減るのか」

をみんなで考えていきたいという気持ちでこのイベントを企画したのだ。

ビーチクリーンに参加していただいたみなさん
ビーチクリーンに参加していただいたみなさん

ビーチクリーン後に千葉科学大学で話していただいたのは、イルカウオッチングや小さな水族館を運営している銚子海洋研究所の宮内幸雄さん、ライフセーバーでシーカヤックレジャーを銚子マリーナで行っている株式会社TKS代表の田村憲章さん、プロトライアスロン選手で2021年日本選手権4位の古山大(たいし)選手、東京オリンピック代表の岸本新菜選手だ。それぞれ、自身が感じている海にまつわる話をしてくれた。

宮内さんは月に1度、船を出港して海の中清掃も行っている。

「きっかけは3年前、イルカウオッチングをしている際にイルカに太い縄が巻き付いているのを見たことです。その時にあらためて『これは何かしなきゃダメだ!』と心が動かされた」。宮内さんはその他にも地域に根付いた環境への取り組みもされている。

田村さんは「元々はライフセーバーとして、単純に海をきれいにすることから始めました。1990年代は空き缶が多く、そこからゴミの質が変わり、今は圧倒的にプラスチック。ゴミ拾いをして『ゴミがあったな』だけでなく、気付きを大切にしてほしいなと思います」と話した。ライフセーバーとしてのキャリアはもちろんだが、観光・レジャーの視点でも環境について話してくれた。

古山選手は「トライアスロン界でも数年前から水質がスイムの有無を判断する指標として組み込まれました。それを目の当たりにした時に、自分たちのスポーツがなくなってしまうのでは? と危機感を覚え、環境に対する意識が変わり、今日のビーチクリーンも僕にとって意識が変わる出来事になりました」と、自身が携わるスポーツの危機感について伝えた。

岸本選手は「アスリートとして、環境に対する意識を向けなくてはと実感する機会でした。また、朝泳いだ時に海の中にビニールがありました。もし、そのビニールをかぶってしまったり、海の動物が飲み込んでしまったり…と考えると、ゴミひとつでも命に関わることと感じ、今まで以上に意識を持って環境問題について考えていきたいと思いました」と環境問題が生命に関わる可能性があることに触れた。

海を愛し、仕事としても活動している方々の言葉は心に響いた。また、実体験を元に気付きがあり、環境への取り組みをしているとお話を聞き、胸が熱くなった。

そして、アスリート目線からも、海の環境次第ではトライアスロンができる場所が減る、最悪の場合は競技が出来なくなってしまうことも考えさせられた。

今回のビーチクリーンとその後の講話を通して、参加してくださった方々が少しでも意識が変わり、その輪がどんどん広がっていくことが出来たら本望だ。

ビーチクリーンに参加していただいたみなさん
ビーチクリーンに参加していただいたみなさん

また、その日の夜にSDGs in Sportsウェビナーvol.8「スポーツ×エシカル」に参加し、スキージャンプの高梨沙羅選手とJPSA公認プロサーファーの武知実波選手の環境に対するお話を聞いた。

高梨選手や武知選手はトライアスロン同様、自然と共存するスポーツ選手なので、自然・環境に対する意識が高く、危機感を持っていると話されていた。

共感することばかりで、この気持ち、現実をもっと多くの方々に知ってもらい、1人1人の意識を変えるきっかけになれば良いと感じた。

ひとりの意識が大きな変化になることを願い、来月もビーチクリーンを通して、私が出来る環境問題と向き合っていきたいと思う。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)