前回のコラムにも書いたが、先日参加した警備会社の研修会で講師の身でありながら新たな発見や考えさせられること、学びが多くあった。今回は、前回触れられなかったもう1つ感銘を受けた事柄について書いていきたい。

警備のお仕事はもちろん、私生活の中やアスリートにも大いにいかされる魔法の言葉を警備会社相談役の竹下年成さんが教えてくれた。

みなさんは日常生活で怒る(いかる)ことはあるだろうか。会社や家庭、あるいは電車の中や車の運転中、生活している中で必ず人やものに対して何らかの感情が生まれると思う。

できる限り穏やかな気持ちで過ごすのがよいが、そうもいかない時もある。

人は怒りを感じてから大体5、6秒待つと怒りがおさまるという。しかし、大半の人はその前に感情が働き、声に出たり顔に出たり、八つ当たりをする人もいるかもしれない。

アンガーマネジメントという言葉もあるように、怒りをマネジメント(コントロール)することはもしかしたら私たちが穏やかな生活を送る必須事項なのではないか。

自分で自分をマネジメントすることも大切ではあるし、目の前に怒っている人がいた時、どう対応するか。

ここで竹下さんが教えてくれた魔法の言葉だ。それは、『いかり』を逆から読むと『りかい』になる。これを聞いた時、『なるほど!』と思わず口に出てしまうほどインパクトのあるフレーズだった。

『いかり』を抱いた時や触れた時、感情のまま動くのではなく、『いかり』に対して『りかい』することを心がけるということだ。

例えば家庭内で夫が怒っているとする。

大抵、怒りは伝染しやすいのでこちらもイライラしてくる。これが鎮まらないとけんかに発展する。ここで、『なぜ、この人は怒っているのか?』と理解をするように心がける。

そうすることで客観的に相手のことを見られるようになり、自分が怒っている時にも冷静になれるという。

これは職場や家庭、アスリートのスポーツシーンでも活用できると感じた。

トライアスロンはコンタクトスポーツではない分、他者との関わりは少ない方ではあるが、スイム時の接触やバイク時のローテーション、走行中など、他者の行動やアクションに困惑し、時にはイラっとする時もある。

怒りの感情をパフォーマンスにぶつける選手も中にはいると思うが、平常心であることの方が良いパフォーマンスが発揮できるし、私個人としてはやはりアスリートはフェアでスポーツマンシップがある方が好きだ。

とっさの怒りの回避は日常生活の意識で改善することができると思うので、ぜひこの魔法の言葉を試していただきたい。(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)

研修会で走る筆者(左から2人目)
研修会で走る筆者(左から2人目)