本番が楽しみになるな試合だった。5日に行われたサッカーの強化試合。U-24日本代表がU-24ガーナ代表に6-0と大勝した。吉田麻也らオーバーエージ3人が入り、堂安律、久保建英らがゴールした。無観客のスタンドの先に「金メダル」が見えた気がした。

相手は、半分近くが10代でU-20代表と言ってもよかった。身体的な強さもないし、チームとしてのまとまりもなかった。「アフリカ予選で惜しくも五輪を逃した」チームではなく「仮想南アフリカ」でもなかった。当然の大勝の中で期待感を持てたのは、日本の「形」が見えてきたからだ。

初めてそろって出場したオーバーエージの力が大きい。この相手にパフォーマンスの評価をすることは難しいが、安定感があった。その存在で、チームに芯ができた。東京五輪開催に向けて繰り返される「安心安全」とはこういう感じなのかとさえ思った。

吉田、酒井宏樹、遠藤航は「史上最強のオーバーエージ」と言われる。A代表の主力で、それぞれ五輪での経験もある。所属クラブで活躍するなど経験も豊富だ。何より大きいのは、森保監督が望んだ選手であること。過去の五輪では、監督の希望が100%通ることが珍しかったのだ。

五輪の出場資格は、1992年バルセロナ大会から「23歳以下」になった。サッカー人気の低迷を危惧した国際オリンピック委員会(IOC)が人気選手が出られるようにと96年アトランタ大会からのオーバーエージ採用を提案。当初は否定的だった国際サッカー連盟(FIFA)が女子種目を加える条件(女子実施は96年大会から)として認めたという経緯がある。

日本は28年ぶりに出場した96年大会から連続で五輪に出場している。16年リオデジャネイロ大会まで6大会でオーバーエージ枠を使用しなかった(できなかった)のは2回。いずれも1次リーグ敗退だった。逆に1次リーグを突破した2回は、いずれもオーバーエージが活躍した。経験ある選手の存在は、大会を勝ち抜く上で欠かせない。

以下が大会ごとのオーバーエージ選手と成績だ。

1996年アトランタ大会(西野朗監督=1次リーグ敗退)なし

2000年シドニー大会(トルシエ監督=ベスト8)GK楢崎正剛、DF森岡隆三、MF三浦淳宏

04年アテネ大会(山本昌邦監督=1次リーグ敗退)GK曽ケ端準、MF小野伸二

08年北京大会(反町康治監督=1次リーグ敗退)なし

12年ロンドン大会(関塚隆監督=4位)DF徳永悠平、吉田麻也

16年リオデジャネイロ大会(手倉森誠監督=1次リーグ敗退)DF藤春広輝、塩谷司、FW興梠慎三

選手のコンディション不良や、所属クラブの事情などで、希望する選手が招集できないケースもあった。海外組をあきらめ、国内から招集したこともある。そういう経緯はメディアやファンも知るし、選手にも伝わる。それが、チームに見えない影響を与える。

今回は「史上最強」の3人だ。多くの候補から森保監督がチームに最適な選手を招集した。五輪での大迫勇也が見たかった気もするが、後ろの選手をそろえたのは1次リーグを突破した00年や12年と同じ。厳しい日程の中、少ない人数で勝ち上がるのに、現実的な選択ともいえる。

最後方で吉田が指揮し、遠藤が中盤を固め、酒井が右を制圧する。前線では若い才能が思う存分ゴールを狙う。東京五輪では、そんな日本を見ることができそうだ。1968年メキシコ大会以来のメダル獲得となれば、早くからクラブと交渉するなどで「史上最強」のオーバーエージ招集を実現させた日本協会のファインプレーでもある。

U-24日本対U-24ガーナ 前半、相手のオウンゴールを誘うクロスを上げる酒井(撮影・前田充)
U-24日本対U-24ガーナ 前半、相手のオウンゴールを誘うクロスを上げる酒井(撮影・前田充)
後半、チームの6点目を決め、遠藤航(左端)とタッチを交わし笑顔を見せる三笘(同2人目)(撮影・前田充)
後半、チームの6点目を決め、遠藤航(左端)とタッチを交わし笑顔を見せる三笘(同2人目)(撮影・前田充)
U-24日本対U-24ガーナ U-24ガーナに勝利しタッチを交わす吉田(右)と酒井(撮影・前田充)
U-24日本対U-24ガーナ U-24ガーナに勝利しタッチを交わす吉田(右)と酒井(撮影・前田充)