競泳37種目の大トリ、男子400メートルメドレーリレーで日本新記録が出た。それでも、6位。記録更新に選手は満足そうだったが、寂しさは否めない。04年アテネから3大会連続メダル。「康介さんを手ぶらで帰せない」の名言も生んだが、今大会を象徴するように世界との差を感じた。

100メートルレースで決勝に残れなかった4人がメダリストたちと争うのだから、最初から期待するのは無理があった。4人が決勝を泳ぎ、うち2人がメダルに絡むようでないと、上位は難しい。8位に終わった女子も同じ。満足そうな表情の選手たちを見ていて「日本の現在地」が分かった。

「流れ」が悪かった。初日に金メダル有力と言われていた男子400メートル個人メドレーの瀬戸が、まさかの予選落ち。その後もメダル候補が次々と決勝進出を逃した。大橋の金メダルでも流れは止められず。最後まで日本は苦しんだ。

他の競技でも「流れ」を感じる。メダル量産も期待されたバドミントンはエース桃田の敗退で、まさかの負けが続いた。逆に柔道は初日の金と銀で波に乗り、最終日の団体戦こそ落としたものの、史上最多9個の金メダルを手にした。あまりにも、競技による明暗がはっきりしている。

海外勢も同じ。競泳では米国にいつもの勢いがなかった。ドレセルの5冠などはあったが、金メダルは37種目中11個。常に半分近くを持って行く競泳王国らしくはなかった。逆にオーストラリアは9個と躍進。英国、中国、イタリアも元気だった。こちらも、はっきりと明暗が分かれた。

新型コロナの影響が、ここにも出ている気がする。感染対策で、選手たちは選手村に「隔離」状態。人の接触は制限され、常に同じ国、同じ競技の選手としか顔を合わせない。チーム内の悪いムードは吹き払うどころかさらに深まり、どんどん悪くなっていく。

普段ならレストランや娯楽室、トレーニングルームなどで他国の選手と触れ合い、チーム内の悪いムードを忘れられる。気分転換に選手村外に出て、楽しむこともできる。しかし、今回はルールを破ったら資格剥奪。チーム内の雰囲気を劇的に変えるすべがない。無観客で応援する家族やファンもいない。孤独な戦いを強いられる選手たちが、流れを変えるのは難しい。

新型コロナ禍、延期、感染症対策…。今大会は「特別な大会」になった。それは、選手も同じ。流れに反して金メダルを獲得するには、強い精神力が必要になる。東京大会の金メダリストは、競技力だけではなれないようだ。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)