レスリングの川井姉妹が「姉妹で金」へ1歩近づいた。62キロ級の妹友香子が、4日から始まる57キロ級姉梨紗子の前で決勝進出を決めた。「2人で金メダル」と何度も繰り返していた姉妹の東京五輪が始まった。

今大会、レスリングは女子の川井姉妹だけでなく、男子フリースタイルの乙黒兄弟もメダル獲得が期待される。これまでも、レスリングは兄弟、姉妹で活躍する選手が多かった。4連覇の伊調馨の姉千春は銀メダルを2個獲得。湯本健一と進一の兄弟はともに銅メダルだったが、2組のきょうだいが出るのは初めてだ。

レスリングだけではなく、今大会はきょうだいが多い。ともに金メダルに輝いた柔道の阿部兄妹、ホッケーの永井は姉、妹、弟の3人で出場した。フェンシングの東姉妹、バレーボールの石川兄妹…。その数は11組、何と23人もがきょうだいで日本選手団に名を連ねた。東京大会は「きょうだいの五輪」でもある。

新型コロナで行動が制限され、日本国民、いや世界中の人たちが苦しんだ。感染拡大防止のために外出が制限され、ステイホームを強いられた。家族と過ごす時間が長くなった。毎日顔を合わせる中で、家族について考えることも多くなった。多くの場合、その絆はより深くなったはずだ。

アスリートも同じ。施設が閉鎖され、練習ができなくなった。チームメートやコーチと会うことも制限された。活動できず、実家に帰る選手も多かった。そんな中で、きょうだいは大きな支えになった。「東京五輪出場」という同じ目標に持っていれば、その関係はより深くなっただろう。

阿部詩は、自粛中の練習を振り返った。「毎日お兄ちゃんと走ったり、トレーニングをした。あんなに長い時間一緒にいたのは初めて」。ともに日体大で練習しているが、男女は別。普段は一緒に汗を流すことはない。だからこそ、自粛期間は貴重だった。兄一二三が代表に内定していなかったため「2人で金メダル」は口にしなかったが、一緒にいるだけでお互いの思いは通じていたという。

互いに励まし、支え合ったからこそ、大舞台にたどりついた兄弟、姉妹…。もちろん、アスリートを見守る家族の存在も大きい。両親の影響で同じスポーツを志したきょうだいも多い。「きょうだいの五輪」は「家族の五輪」でもある。

兄弟、姉妹が多いのは、偶然ではないと思う。人々の意識も「家族」に向いたから、見ていても感情移入しやすくなる。残念なのはアスリートの家族が直接応援できないこと。「家族の五輪」なのに…。川井友香子の決勝は4日、梨紗子は5日。もうすぐ「きょうだいの目標」「家族の夢」ががかなう。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)

スウェーデンのヨハンソン(左)に判定勝ちし一礼する川井友(撮影・パオロ ヌッチ)
スウェーデンのヨハンソン(左)に判定勝ちし一礼する川井友(撮影・パオロ ヌッチ)