板橋美波の演技(2017年2月4日撮影)
板橋美波の演技(2017年2月4日撮影)

きらめくような「109C」は復活するだろうか。飛び込みワールドシリーズ相模原大会が3日まで相模原市立総合水泳場で行われた。16年リオデジャネイロ五輪代表の板橋美波(19=JSS宝塚)は、左すねの痛みに苦しんでおり、個人種目を回避。板橋の代名詞である「前宙返り4回転半抱え型(109C)」を披露する場面はなかった。

女子で「109C」を飛べるのは、世界中で板橋1人といわれる。高さ10メートルの飛び込み台から助走をつけてジャンプ。そのまま両足を抱えて、前宙返りを4回転半して、頭から入水する。完璧に成功すれば、女子で誰も追いつけない高得点をたたき出せる必殺技だ。フィギュアスケート女子でいえば、紀平梨花の代名詞である3回転半ジャンプに匹敵するような破壊力。ただ同じくリオ五輪代表で男子の坂井丞(26=ミキハウス)ですら「腰に負担がくるから、予選からは使わなかった」というほど、体に負担がかかる大技だ。

板橋は昨年8月のジャカルタ・アジア大会で左すねを痛めた。「最初はちょっと痛いぐらいで、すぐ治ると思っていた」。しかし同9月に症状が悪化して「試合に出られないぐらい痛くなった」という。現在でも高飛び込みの練習は1日5本などジャンプ数に制限を設ける。最も負荷がかかるのは踏み切り。はだしでコンクリート製の飛び込み台を強く蹴って、空中に飛び出す。特に「109C」は地面からの強い反発を受け止めなければいけない。板橋を指導する馬淵コーチは、板橋について「深刻ですね。いつでも折れる不安を抱えている。コーチとして申し訳ない」と口にする。

アスリートにけがはつきものではある。板橋は、東京五輪に向けて「高飛び込みが最優先なので、けがを治していく」と話している。リオ五輪の高飛び込みでは日本勢80年ぶりの8位入賞を果たしたが「109C」は回避している。「東京五輪で109Cを」の気持ちは強いだろう。19歳が万全の状態、最高の種目構成で大一番に臨めることを期待している。【益田一弘】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

板橋美波(2017年2月4日撮影)
板橋美波(2017年2月4日撮影)

◆益田一弘(ますだ・かずひろ)広島市出身、00年入社の43歳。五輪は14年ソチでフィギュアスケート、16年リオで陸上、18年平昌でカーリングなどを取材。16年11月から水泳担当。