ライトアップされたステージ上には、2つの長テーブルが並んでいた。4人ずつに別れて座り、視線を下に向ける選手たち。知恵を振り絞り、狙いを定めて指を動かすと、巨大モニターにプレー画面が映し出された。

固唾(かたず)をのむ選手らが、握りしめているのはスマホ。勝負を決めるファインプレーが出ると、スポーツ観戦さながら約460人のファンらの大歓声が会場中に響き渡った。

モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップの台湾予選大会の試合の様子
モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップの台湾予選大会の試合の様子
モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップの台湾予選大会の試合ステージ
モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップの台湾予選大会の試合ステージ

舞台は台北。人気スマホアプリ「モンスターストライク」のアジアNO・1を決める「モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップツアー」台湾予選が、5月26日に行われた。優勝したチーム「邊縁肥宅」が、7月13、14日に千葉・幕張メッセで行われる決勝大会への進出を決めた。

モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップの台湾予選大会で優勝したチーム「邊縁肥宅」
モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップの台湾予選大会で優勝したチーム「邊縁肥宅」

「モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップ」は、株式会社ミクシィが主催する大会で、過去4回は「チャンピオンシップ」として日本国内だけで行われていた。そして今大会から初めて海外のチームが参加。台湾の他に香港でも予選大会が行われ、国内外7カ所で行われた予選を勝ち抜いた計10チームが、7月の決勝大会でアジア初代チャンピオンを決める。

スマホアプリ「モンスターストライク」は、株式会社ミクシィ内のブランド「XFLAG」が提供している。13年10月にリリースしてから、今年の4月までで世界累計利用者数が5000万人を突破した大人気アプリゲーム。味方のモンスターを引っ張り、おはじきやピンボールのように敵に当てて倒して遊ぶゲーム。操作性も簡単で誰でも気軽に遊べることができる。大会では2チームに分かれて、ステージをクリアするスピードで競い合うが、1人でも十分に楽しめるゲームになっている。

指やタッチペンでスマホ画面上の味方モンスターを引っ張って、相手にぶつける。単純な動作だからこそ、さらに夢は広がる。XFLAGモンスト事業本部の鶴見彩子氏は「今後はもっと多くの障がいのある方にも遊んでもらいたいと思っています」と話す。例えば、手が動かせなくても口でタッチペンを使うことができるかもしれない。携帯1つあれば気軽に遊べるため、家でも、ベッドの上でも、車いすに乗りながらでも、どこでも遊べるのではないか。そう鶴見氏は考える。

またライブエンターテインメント事業部の比奈本真部長は「eスポーツの“e”はエレクトロニックの“e”ではない。エンターテインメントの“e”だ」と力説。eスポーツは誰もが気軽に楽しめることができ、まだまだ多くの可能性を秘めているスポーツだと考えている。7月の決勝大会は、優勝賞金4000万円で賞金総額は1億円と夢がある。大会会場も派手なライトアップや音響設備が施され、さながら人気アーティストのライブ会場のような雰囲気が漂う。エンターテインメントの要素がふんだん盛り込まれる予定だ。

モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップの台湾予選大会の会場に詰めかけたファン
モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップの台湾予選大会の会場に詰めかけたファン

日本は他の先進国に比べると、まだまだeスポーツへの関心や社会的地位は高くない。だが台湾では17年にeスポーツが国の正式なスポーツ産業として認可。プロの選手がグッズの広告として登場するとすぐに完売するなど、社会的地位が高く、同じアジアとして日本の手本になる部分も多そうだ。

「eスポーツはスポーツではない」という声が、国内ではまだ多いのが現実。例えば野球やサッカーなどのように、泥まみれになりながら、過酷な練習に耐え、自分の限界に挑戦するような競技に比べれば、たかがゲーム、と認識されるのもおかしくない。だが強度は違うかもしれないが、eスポーツのプロ選手も長時間の練習や何日もかけて緻密な作戦を練り、勝つために努力を惜しまない。

そして大会会場も、野球やサッカーなどの試合と同じように、ファンの熱気やエンターテインメントに富んだ雰囲気がある。百聞は一見にしかず。7月に千葉・幕張メッセで行われる大会で、eスポーツの熱気を体験できる。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップの台湾予選大会の会場の様子
モンストグランプリ2019アジアチャンピオンシップの台湾予選大会の会場の様子