GS大阪大会への意気込みを語る熊代佑輔(撮影・峯岸佑樹)
GS大阪大会への意気込みを語る熊代佑輔(撮影・峯岸佑樹)

31歳の柔道家が、新たな挑戦に挑む。強豪東海大男子柔道部の助監督を務める熊代佑輔(31=ALSOK)が24日、グランドスラム(GS)大阪大会(丸善インテックアリーナ大阪)最終日に出場する。100キロ級から100キロ超級に変更後、初の国際大会。同階級に出場する教え子3人と切磋琢磨(せっさたくま)し、「若い世代の壁」となる。

3週間前の講道館杯全日本体重別選手権。185センチ、120キロ。100キロ級時代よりも一回り大きくなった熊代が、千葉ポートアリーナの畳上にいた。柔道着と帯を作り直した“巨大熊”は、スピードを生かした足技と担ぎ技を連発し、勝利を重ねた。決勝では教え子の香川大吾(22=ALSOK)を下し、100キロ超級で同大会初優勝。今年9月に階級変更して、東京五輪代表選考会を兼ねるGS大阪大会の代表権を得たため、周囲を驚かせた。

「出場するからには負けたくない。今は稽古よりも試合が楽しいし、超級選手に対してどこまで通用するかがモチベーションになっている。GS大阪は新たなチャレンジ。(東海大の)後輩たちには『自分を超えて世界へ出ろ』と畳の上でメッセージを伝えたい」

東海大を卒業後、同大の重量級コーチを経て、16年に助監督となった。指導者と選手の二足のわらじを履く日々を送る。年齢を重ねながら稽古量は減り、ここ数年は減量に苦しんだ。100キロ級では試合の度に、15キロ前後の減量を余儀なくされた。1カ月かけて体重を落とすが、相手の道着をつかむ握力が落ちるなどパワーダウンすることが課題だった。

近年の国際大会では、筋骨隆々の100キロ級選手が、100キロ超級に上げて結果を残している。スピードとパワーを生かし、これまであまり見られなかった豪快な担ぎ技で「最重量級の勝利の概念」を変えた。18年世界王者のツシシビリ(ジョージア)や19年世界王者のクレパルク(チェコ)らがその代表格だ。熊代も数年前から、この流れに乗っかろうと挑戦を検討していたが踏み切れず、今年チャレンジすることを決意した。

稽古量は、20代半ばの頃に比べて半分以下となった。乱取りを行わない日もある。日々のトレーニングも長い場合で1時間30分、短い場合は1時間以下だ。しかし、学生に指導することで「考える力」を身に付けた。「人を見て、対策を頭の中で構築するようになった。若い時はがむしゃらだったけど、今はやるべきこととやらなくてよいことが分かる」。

100キロ級時代には、国際大会で勝てない低迷期が続いた。14年世界選手権代表の最有力候補であったが、初の派遣見送りの屈辱を味わった。「世界は本当に厳しい。身をもって感じているし、勝つことがより難しくなっている。100キロ超級も、以前のような力だけの巻き込み系の技だけでは勝てない。スピード感と新たな技術を取り入れることが必要」と分析する。

自身もツシシビリをまねして、変則的な袖釣り込み腰などの担ぎ技や組み手技術を勉強中という。男子代表の井上康生監督(41)は「このチャレンジは、後輩たちの良い刺激になっていると思う。若手もいろいろなことを学んで吸収してほしい」と話した。

東京五輪代表争いは、16年リオデジャネイロ五輪銀メダルの原沢久喜(27=百五銀行)が1歩リードするが、まだ諦めていない。「もちろん、五輪は目指している。周りからしたら迷惑かもしれないが、諦めたら終わり。年齢で言い訳せずに、戦い方を変えてGS大阪でも1戦1戦勝ちにつなげたい」。

大阪の地で“和製ツシシビリ”となるか!? 進化する31歳のベテランの新たな挑戦に注目だ。【峯岸佑樹】

100キロ級時代の熊代佑輔(右)
100キロ級時代の熊代佑輔(右)
今年10月のALSOK合宿に参加した熊代佑輔(2列目左)
今年10月のALSOK合宿に参加した熊代佑輔(2列目左)
100キロ超級に階級変更した熊代佑輔
100キロ超級に階級変更した熊代佑輔