日本から約9000キロ離れたブルガリア国内で、山形・村山市民のYouTubeでのビデオメッセージが話題になっている。東京オリンピック(五輪)に向け、同国新体操代表チームが何度も事前キャンプに訪れ、交流を続けてきた。1年延期となり不安な日々を送る代表選手へ、市民の有志が「新型コロナウイルスに負けるな。またみんなで会おう」とエール。手作り感満載の動画が大きな反響を呼び、現地テレビや新聞が相次いで報じた。

村山市は、ブルガリアの東京五輪ホストタウンである。白、緑、赤のブルガリアカラーの服やタオルを身につけた市民の有志が「コロナウイルスに負けるな」「いつでもどんな時でも皆さんの味方です」と言い、ブルガリア国歌も歌い、新型コロナで自宅待機を余儀なくされている選手達を激励している。

このビデオメッセージを企画した代表の小室けい子さん(69)は「4月にソフィアで行われるワールドカップ(W杯)に招待されていたんですが、延期になりました。現地で披露するはずだった出し物で、選手達を元気づけたいと撮影しました」。ソフィアも含め、ブルガリア国内ではあまりマスクをつけないことも聞き、ブルガリア語訳を付けて家庭で簡単にできる手作りマスクの作成動画も投稿した。

反響は予想以上だった。ブルガリアの国営放送や全国紙が、ビデオメッセージの取り組みを相次いで報じた。駐日ブルガリア大使館にもその知らせは届いているようで、担当者は「日本の方々の行動はとてもうれしいです」と話す。

事前キャンプのため来日し、滞在している間は、選手達が小学校を訪れて新体操の技を披露したり、市内の農園でサクランボ狩りを楽しんだり交流を重ねてきた。市の担当者は「ナショナルチームが来ることでより良い交流につながっています」と話す。交流をサポートしている小室さんは「選手達は競技を離れると、かわいらしい女の子」。市内のショッピングセンターを訪れた時には、友達に買うおみやげ選びで和気あいあいとしていた。日本の若者とあまり変わらない印象を受けたという。

ただ、マットに上がると、選手達は真剣そのもの。コーチから厳しい指導を受け、心配になった小室さんが「練習辛くない?」と尋ねると、選手達は「私たちを強くするために全力でサポートしてくれている」と答えた。練習は毎日8時間以上に及ぶがオンとオフの切り替えはさすが一流で、「マットを出たら、コーチも友達です」と笑顔を見せていた。

小室さんは「新型コロナで『日本は大丈夫?』と連絡をくれるんです。練習もままならない状況なのに、心配してくれてうれしかったです。孫のような存在です」と喜ぶ。終息してまた顔を合わせる機会を、待ち望んでいる。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「WeLoveSports」)