7月上旬に九州地方などを襲った豪雨災害から約1カ月半がたった。サッカー界でも熊本県出身の元日本代表FW巻誠一郎氏(40)らが復興活動を行い、スペイン2部サラゴサのMF香川真司(31)も賛同。支援の輪が広がる中、女子のなでしこリーガーらを中心に立ち上げられた支援団体「チームGolazo(ゴラッソ)」の活動にも活気が出てきている。

創設者は千葉レディースのGK船田麻友(29)。被害を受けた熊本県人吉市に祖父母宅があった。球磨川の氾濫で1階部分は浸水。送られてきた写真を見ると、昔よく弾いていたグランドピアノがタンスなどと共に真っ逆さまになっていた。「部屋の原型がなかった。水が引いてもカビだらけ。よく遊びに行っていましたし、何かできることはないかと思った」。すぐに周囲に呼びかけ、ゴラッソを設立した。

現地の声を聞くと私物を流された人が多く、最初の活動は子どもたちへサッカーボールを贈ることに決めた。SNSなどを通じて新品、中古問わずボールの寄付を呼びかけると、ひとつ、ふたつとボールが続々と届いた。そして8月19日に目標の100球に到達。熊本県内のサッカーチームへ向けた第1便が23日に到着予定となっている。

船田は「選手や千葉のサポーターからも『ボールあるよ』と連絡を頂いて、うれしかった。まずは1人のサッカー選手として子どもたちに夢と希望を持ってもらいたい」と話す。自身も11年の東日本大震災をはじめ、千葉県内に甚大な被害をもたらした19年の台風15号を経験しており「開幕が遅れたり、いろんなところで影響があった。その経験もあったからこそ体が動いたのかなと思います」。

ゴラッソのメンバーには熊本県玉名市出身で日本人女子選手で初めてブラジル1部リーグのプロ契約を結んだMF藤尾きらら(21=アバイ・キンダーマン)も所属する。「私もブラジルで困った時に現地の方に助けていただきました。その時に感じて学んだことを生かして支援できれば」と意気込む。それぞれが経験を生かしながら、被災地の「ゴラッソ(素晴らしいゴール)」へと思いをひとつに話し合いを続けている。

支援金援助なども続けながら、今後は9月中をめどに子どもたちとのオンライン交流会も企画中だ。新型コロナウイルスの感染状況も気になる中、被災地では今でも復旧活動が続く。船田は「諦めずに1歩1歩、進んでほしい。できることはやりたいので、SNSなどで連絡をいただければ」と呼びかけた。【松尾幸之介】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

熊本県人吉市に祖父母宅は球磨川の氾濫で1階部分が浸水。グランドピアノがタンスなどと共に真っ逆さまに(提供写真)
熊本県人吉市に祖父母宅は球磨川の氾濫で1階部分が浸水。グランドピアノがタンスなどと共に真っ逆さまに(提供写真)