東京オリンピック(五輪)・パラリンピックに向けてリニューアルされた日本武道館(東京都千代田区)で4日、改修後初イベントとなる空手の関東大学選手権が行われた。コロナ禍で大会中止が相次いだ空手では待望の大会実施。選手同士の接触が多い格闘系競技にあって、本格的な再開への1歩をいち早く踏み出した。

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新装なった五輪会場に、若い空手家たちの「気合」が響いた。

全日本空手道連盟(全空連)が定めた従来の感染拡大防止ガイドラインでは、飛沫(ひまつ)発生を防ぐため、技を繰り出すさいなどに発する「気合」の声出しが禁止されてきた。しかし先日、効果的な対策方法が発表され、「気合解禁」の運びに。頭部をガードするメンホーという防具と、口元を覆う小型シールドの組み合わせが、競技に活気を呼び戻した。

通常ならメンホーをつけない大学生に、今大会では着用が義務づけられた。この防具に口元部分を内側からふさぐプラスチックを取り付けることで、飛沫の大幅カットに成功。専門会社が高感度カメラなどを用いて実施した調査によれば、飛沫量を最大98%削減することが確認された。全空連関係者は、東京五輪代表内定者も出場してくるであろう12月の全日本選手権でも、同様の装具を義務化する方針を口にする。

この日、女子組手で初優勝した国士舘大の芳賀由依主将(4年)は、高校時以来となるメンホーに「戸惑いはあったし、シールドによる息苦しさも感じた」と明かす。それでも「試合になったら気にならなくなった。『気合』を出せることで、本来の力を発揮できた」。技の切れや力強さを存分に繰り出すうえでも、ためらうことなく発声できたことは大きかった。

春先から3カ月ほど練習ができない日が続いたころ、芳賀主将は「試合ができないまま引退するかも」と、気持ちが切れそうになった日もあったと振り返る。そうした中で大会実施が決まったことは、モチベーション向上につながった。学生生活最後の大会を飾り、「悔いなく終われた」。充実感を漂わせた。

今大会では、飛沫関連のほかにも、さまざまなコロナ対策が施された。そのひとつが館内換気で、60台近い扇風機をレンタルし、空気を常時入れ替えた。また選手が競技会場に入るさいには、手の消毒だけでなく、消毒液を浸したマットが敷いてある桶の中で足踏みすることで、足裏も徹底消毒。ウオーミングアップ中はもちろん、団体戦の試合中にも、自分の出番時以外にはマスク着用が義務づけられた。審判はフェイスシールドを装着。試合中は監督の声による指示も禁じられた。

周到な準備と対策を講じての大会実施。全日本学生空手道連盟の古川稔副理事長は、「簡単には中止にしたくなかった。困難にぶつかったとき、乗り越える方法を学生たちに学んでもらえたのでは」とうなずいた。【奥岡幹浩】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

通常は大学生が装着しない頭部を覆う防具を用いるなどして、飛沫(ひまつ)量を大幅カット。出番を持つ選手や審判らのマスク着用を徹底するなど、周到なコロナ対策のもとで行われた空手の関東大学選手権(撮影・奥岡幹浩)
通常は大学生が装着しない頭部を覆う防具を用いるなどして、飛沫(ひまつ)量を大幅カット。出番を持つ選手や審判らのマスク着用を徹底するなど、周到なコロナ対策のもとで行われた空手の関東大学選手権(撮影・奥岡幹浩)