東京オリンピック(五輪)会場となったカヌー・スラロームセンター(東京都江戸川区)で、東大に籍を置く秀才が選手として奮闘した。

今月13、14日に行われたカヌー・スラロームの日本選手権とNHK杯全日本競技会。16年リオデジャネイロ五輪銅メダルの羽根田卓也がカナディアンシングルで連日の優勝を飾るなど東京五輪代表組が貫禄を示した中で、カヤックシングルの浅見明太(27=青梅市カヌー協会)も日本選手権決勝に進出。激流へと果敢に挑んで11位でフィニッシュした。翌日のNHK杯では準決勝で敗退し、「できれば決勝に残りたかったけれど、最近は研究のほうに比重が移っている。そうした中でも、やれることはやれました」。悔しさをにじませつつ、納得の表情を浮かべた。

全国大会のジャパンカップで18年に3位に入り、同年には海外の大会で優勝した実績も持つ。水上で活躍してきたスラローマーは頭脳も明晰。東大卒業後は、東大大学院工学系研究科に進んで太陽電池について研究。昨秋には国際会議で表彰を受けた。

青梅市出身で、今でもカヌーの練習拠点は地元に置く。10歳のときに近所で開かれた体験会に参加したことが競技と出合うきっかけとなり、その後はカヌーと勉強を両立。東大入学後も競技を続け、世界の強豪が集うワールドカップに出場したこともある。国内外での実績が評価され、東京都による東京アスリート認定制度の対象に4年連続でなっている。

今夏の東京五輪では、選手ではなくボランティアとして競技会場で活動した。審判が確認する映像のビデオ撮影を担当。「五輪の雰囲気を肌で感じられたことは貴重な経験となりました」と振り返る。

大学生のころは週5日以上の水上練習を行っていたが、より研究へと時間を割くようになっている現在は、乗艇できる日は当時の半分程度といったところ。それでも夜10時頃に帰宅後は、ランニングや体幹トレーニングを毎日継続してきた。「カヌーは練習できる場所がどうしても限られてしまう。そして夜だと川は暗いので練習できず、時間にも制限がある。研究や仕事との両立は簡単ではありません」と正直に吐露するが、表情は明るい。「カヌーも研究も、好きでやらせてもらっていること。大変な面もあるけれど、楽しさのほうが大きい。まだまだ続けていきたいですね」。研究対象である太陽電池のごとく、水面に燦々(さんさん)と降り注ぐ光を力に変え、パワフルにこぎ続けていく。【奥岡幹浩】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

東京五輪会場にもなったカヌー・スラロームセンターでの全国大会に出場した東大大学院の浅見(撮影・奥岡幹浩)
東京五輪会場にもなったカヌー・スラロームセンターでの全国大会に出場した東大大学院の浅見(撮影・奥岡幹浩)