約2年前、新型コロナウイルスの猛威が急拡大を続け、あらゆることの先行きが不透明だったあの頃-。国内のあるプロスポーツチームが、クラウドファンディングを通じて窮状を訴えた。

「経営難で存続危機! 再建達成へ向け香川ファイブアローズは挑戦します!」

バスケットボールBリーグ2部(B2)に所属する香川ファイブアローズ。当時は球団初のプレーオフ進出を決めながら、シーズンは途中で打ち切りに。入場料収入も断たれた。

そうした中で実施したクラウドファンディングは、約1カ月半で目標額の1000万円に到達。多くのサポートを追い風にクラブは苦境を乗り越え、今季は西地区初優勝を果たした。藤田秀彰代表は「皆さまに支援をいただいたことをきっかけに、自分たちの方向性がはっきりした」と感謝する。

今季もリーグ全体で多くの試合が中止になるなど、コロナの影響はまだまだ大きい。藤田代表は「厳しい状況は変わらない」としつつも、「クラウドファンディングを機に、上向きな状態は続いている」と力を込める。

戦力を強化し、1部昇格を狙える魅力的なチームをつくることで、集客がアップ。それがスポンサー獲得につながる好循環が生まれている。地元メディアを中心にチームの活躍が取り上げられる機会が増え、認知度はさらに向上した。プレーオフで敗れてB1昇格は持ち越しとなったものの、来季に向けて期待は高まる。

高松市香川総合体育館で行われたプレーオフ準決勝第1戦では、地元出身のNBAプレーヤー、渡辺雄太(ラプターズ)がプライベートで会場を訪れて観戦した。将来的な“渡辺、ファイブアローズ入り”を期待する地元ファンの声は「耳に入ってきます」と、にこやかにうなずいた藤田代表。獲得オファーの可能性について問われると、その表情から柔和な雰囲気が消え、「オファーしたい気持ちは満々だけれど、まずはB1に昇格すること。その先の展開を考えるのはそれから」。口調に熱が帯びた。

Bリーグ創設以来、1部(B1)では関東地区をホームとするクラブが存在感を示してきた。しかし今季は琉球や島根など、地方を拠点とするチームが奮闘した。藤田代表は「大きな刺激を受けている。とくに島根の躍進は、地方クラブのあり方の1つの方向性となる」。なによりも着目したのは集客力という。

すでに着工が始まっている県立体育館は、8000人を収容可能だ。「多くのお客さんが集まり、地域全体で盛り上がることで、我々の存在価値がある。チームが地元経済に活力を与えられる存在になれれば」。コロナ禍で多くのサポートを受けたクラブが、そのパワーを還元し、循環させていく。【奥岡幹浩】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

◆香川ファイブアローズ 2005年11月に設立。06-07年シーズンよりbjリーグに「高松ファイブアローズ」として加入。Bリーグに参入した16-17年シーズンから現クラブ名となった。愛称は、平安時代末期の源平合戦で、現在の高松市内を舞台とした屋島の戦いにおいて、那須与一が矢で扇の的を射抜いた故事に由来。チームカラーはアローズイエロー(黄)と瀬戸内ネイビー(濃紺)。前者は、県の象徴である金毘羅山、うどんのだし、小麦畑、瀬戸内の朝日などの「黄金色」をイメージ。後者は瀬戸内の穏やかで寛大な海の色にちなむ。