1997年のライスボウル
リクルート | 19 |
13-3 6-7 0-0 0-6 |
16 | 京 大 |
リクルート、京大の連覇を阻止し初の日本一に
<アメリカンフットボール:ライスボウル>◇97年1月3日◇東京ドーム
リクルートが連覇を狙う京大を下し、初の日本一に輝いた。前半にQB松本義幸(26)の2TDパスなどで19―10とリード。京大の反撃を試合終了直前の1TDに抑えて、19―16で逃げ切った。大学時代は2部リーグ出身の雑草軍団が、昨年の池之上貴裕コーチ(27)のワールドリーグ(WLAF)挑戦を機にプロ軍団へと変身をとげ、創部14年目で頂点に立った。MVPにはRB中野康隆(26)が選ばれた。
京大の追撃を振り切った青いジャージーの軍団が、人工芝のフィールドへなだれ込んで雄たけびを上げた。ディビッド・スタント・ヘッドコーチ(33)が宙を舞い、歓喜のスポーツドリンク・シャワーがぶちまけられた。「守備陣がアグレッシブだった。京大はどうしていいか分からなかっただろう」。スタント・コーチは要所で京大に7回も反則させた、攻守のプレッシャーを勝因に挙げた。
リクルートは速攻で主導権を握った。32回のランで159ヤードを獲得したRB中野のランプレーを軸に、第1Q(クオーター)に2TD。第2QにはQB松本が8ヤードのTDパスを決め、19―10で折り返した。「攻撃ラインが守備ラインに穴をあけてくれた」と、中野はチームの勝利を強調した。
同好会から出発し、日本一へはいばらの道だった。1984年(昭59)の創部当時の練習場は河川敷。休日は草野球場の抽選に早朝から並んだ。7年前には川崎競馬場のトラック内を借りたが、競馬開催が近づくと「馬が驚くから、大声は禁止」。小声で練習したのも今では笑い話だ。
日本一を弾みに、4日にはNFL下部組織で欧州のワールドリーグの入団テストを、TE安部ら6選手が受験する。昨年はDLだった池之上コーチが日本初のプロとしてプレーした。今季はコーチとなって、大学時代は無名の2、3部リーグだったチームに、したたかなプロ意識を芽生えさせた。
仕事優先のため、練習は週3日が限界。時間も2時間程度だが、池之上コーチの指導のもとアフターケアに時間を割いた。「練習と同じくらいケアに時間をかけたおかげでケガ人が激減。肉体レベルも向上した」と並河研監督(34)。故障者が減ったことでチーム内のポジション争いはし烈になった。リクルートとプロ契約した女子マラソンの有森裕子(30)にも、何度か講演してもらってプロ意識を吸収した。
関東2部の一橋大出身のLB遠藤主将(26)も、テストを受験する。「優れた選手はいないが、チームのシステムに合わせて力をつけた。テストは運動会のつもりで」と屈託なく笑った。【大上悟】