「コーチ選び」はプレーヤーのキャリアを左右する重要なポイントだ。合わないコーチに習っていても上達は遅い。これはプロでもアマチュアでも一緒である。選ぶポイントはいくつかあるが、もっとも重要なのは「この人ならうまくさせてくれるだろう」という雰囲気だ。


●尊敬できなければ上達しない


コーチを探すのにいくつかの体験レッスンを受けたことがある人は、その中に「この人に教わってもうまくならなそう」というコーチがいたかもしれない。人対人なので相性の問題もあるが、そう思ったコーチに教わっても十中八九、上達することはない。

うまくならなそうと感じたのは、その体験レッスンの中でコーチが「尊敬できる存在」でなかったからだ。レッスンはお金を払ってはいるものの技術を教わるのだから、相手が尊敬できる対象でなくてはならない。尊敬の理由は選手とのして実績でもいいし、コーチとしての実績でもいい。実績がなくても「この人何でこんなことまで知ってるんだろう」なんていうものでも尊敬の対象になるだろう。

このようにコーチを尊敬できるということは、タッグを組むうえでは最低限の条件だ。どんなにためになる言葉をかけられたいいレッスンだったとしても、尊敬がなければ心からその言葉を信じて実行してみようとは思えないだろう。


●レッスンは対話だ


尊敬という土台があったうえで、重要なのが「対話ができること」だ。

例えばスイングに対してちょっとした疑問があり質問をしたとしよう。「下半身から切り返すって、どこの事を指しているんですか?」という具合だ。

その質問に対して「“たぶん”左足からだと思うんだよね」と具体的な答えを明示しきれなかったり、「下半身から切り返すってことはね…」とズバリの答えを返してくれないコーチは対話ができていない。そんな返答では、どことなく自信がなさそうに見えてしまうかもしれない。

その点、PGAツアーのコーチたちは「うまくさせるオーラ」を出しまくっている。自信と誇りが毛穴からにじみ出ている感じだ。じっとスイングをチェックしているときでさえ「俺に教わったら絶対うまくなるぜ」という雰囲気を出している。

会話の中で答えに詰まることはなく、必ず言い切りで伝える。恐らくコーチにだってとっさの判断ができない事や悩みだってあるはずだ。しかしそれを外に出してしまったとき、相手のプロがどんな気持ちになるか、それがプレーにどんな影響を与えるかまで考慮して対話をコントロールしている。

ミッシェル・ウィーを指導するデビッド・レッドベターやザック・ジョンソンを指導するマイク・ベンダーといった売れっ子コーチたちは、必ず答えと一緒にその論拠までを教えてくれる。レッドベターなら「体と腕のシンクロ。これは絶対。なぜなら体が腕を動かしているから、常に連動してなくてはならないだろ」というような感じだ。

コーチへの信頼度は、上達のスピードに大きな影響を及ぼす。冬のボーナスでレッスンにでも通ってみるかと考えている人は、自分に合ったコーチを見つけるために今のうちから体験レッスンなどに行って多くのコーチと話をしてみるといいだろう。

◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。欧米のゴルフ先進国にて米PGAツアー選手を指導する80人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を直接学び研究活動を行っている。書籍「ロジカル・パッティング」(実業之日本社)では欧米パッティングコーチの最新メソッドを紹介している。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)