松山英樹(23=LEXUS)がフェニックス・オープンで挙げた米ツアー2勝目は、もっと騒がれてもいいと感じている。

 優勝を受け、米スポーツ専門局ESPNは高い評価を伝えた。“ビッグ4”と称されることもあるジョーダン・スピース(米国)、ロリー・マキロイ(英国)、ジェーソン・デー(オーストラリア)、リッキー・ファウラー(米国)の世界ランク上位4人に対し「次のグループにいる」と、松山の現在地を説明。言葉の壁が米国での戦いをより難しくしている点を指摘しつつ「メジャーで勝つ技術はある。最終的に(トップグループに)入ってくる」「23歳で2勝している。時間は十分ある。(フェニックス・オープンの)日曜日に見せたパッティングを続けられれば、すぐにもっと勝てるだろう」との見解を示した。

 ESPNが言及している松山の年齢。23歳(25日に24歳の誕生日を迎える)で日本人では丸山茂樹に次いで2人目の米ツアー複数優勝を達成した。丸山が02年バイロン・ネルソンクラシックで2勝目を挙げた時は32歳(3勝目は03年クライスラー・クラシックで34歳)。青木功が83年ハワイアン・オープンで日本人初優勝を挙げたのが40歳。今田竜二が08年AT&Tクラシックを勝ったのが31歳。男子ゴルファーがピークを迎える時期は個人差も大きいとはいえ、松山のペースは、やはりすごい。

 これは日本人に限らず、米ツアー全体を見渡しても言えることだ。松山の生年月日は1992年(平4)2月25日。90年代に生まれ、2勝以上を挙げている選手は3人しかいない。7勝のスピース、4勝のパトリック・リード(米国)、そして、松山。「22歳で7勝」というタイガー・ウッズ(米国)に並ぶ偉業を成し遂げたスピースは圧巻としても、唯一の海外選手として松山が名前を連ねた点は見逃せない。

 90年代生まれで米ツアー優勝経験のある選手は先に挙げた3人を含めて11人。11人の名前と生年月日、勝った大会を並べると以下のようになる。


 ◆ジョーダン・スピース(米国)

 1993年7月27日

 13年ジョンディア・クラシック、15年バルスパー選手権、マスターズ、全米オープン、ジョンディア・クラシック、ツアー選手権、16年現代自動車チャンピオンズ


 ◆パトリック・リード(米国)

 1990年8月5日

 13年ウィンダム選手権、14年ヒューマナチャレンジ、キャデラック選手権、15年現代自動車チャンピオンズ


 ◆松山英樹(日本)

 1992年2月25日

 14年メモリアル・トーナメント、16年フェニックス・オープン


 ◆ジョン・フー(米国)

 1990年5月21日

 12年マヤコバ・クラシック


 ◆デレク・アーンスト(米国)

 1990年5月16日

 13年ウェルズ・ファーゴ選手権


 ◆盧承烈(ノ・スンヨル=韓国)

 1991年5月29日

 14年チューリッヒ・クラシック


 ◆ブルックス・ケプカ(米国)

 1990年5月3日

 15年フェニックス・オープン


 ◆ダニー・リー(ニュージーランド)

 1990年7月24日

 15年グリーンブライア・クラシック


 ◆エミリアノ・グリジョ(アルゼンチン)

 1992年9月14日

 15年フライズコム・オープン


 ◆スマイリー・カウフマン(米国)

 1991年11月30日

 15年シュライナーズホスピタル・オープン


 ◆ジャスティン・トーマス(米国)

 1993年4月29日

 15年CIMBクラシック


 今季は昨年10月の開幕からグリジョ、カウフマン、J・トーマスと3試合連続で20代前半の選手が優勝し、ちょっとした話題となった。世界中から才能が集まり、次々と新たな若手有望株が台頭してくる米ツアー。その中にあって、松山の2勝の価値は際立つ(ちなみに、話はそれてしまうが、松山、石川遼より年下で優勝経験のある日本人は川村昌弘しかいないという日本男子ツアーの現状も付け加えておきたい)。

 内容も素晴らしかった。フェニックス・オープンは米ツアー最多の観客動員を誇るモンスタートーナメント。特に今年は1週間で新記録となる61万8365人が集まった。プレーオフの相手は米国で抜群の人気を誇るファウラー。松山も会見で「99%は僕の応援じゃない」と表現した完全アウェー。さらに、松山は昨季、優勝のなかった選手の中では最多のトップ10フィニッシュ9度と勝てそうで勝てなかった。一方でファウラーは昨年5月から欧州ツアーを含めて4勝を挙げ、自己最高の世界ランク4位に躍進中。勢いもあった。

 それでも、松山は最後まで崩れなかった。驚異的なしぶとさが、ホームであるはずのファウラーのメンタルに影響を及ぼしたのかもしれない。プレーオフ2ホール目でティーショットを構え直すなど、途中から明らかにナーバスになっていった。

 決着のプレーオフ4ホール目、17番。この4日間、17番のスコアは松山の3バーディー、ノーボギーに対し、ファウラーが1バーディー、2ボギー。特に最終ラウンドはティーショットをグリーン奥の池に入れる信じられないミスで、2打のリードを追いつかれたホールだ。嫌なイメージは、少なからずあっただろう。ここまで勝負をもつれさせた松山の粘り勝ちという見方もできる。

 振り返れば、日本人最年少の22歳で制した14年のメモリアル・トーナメント。当時世界ランク1位のアダム・スコット(オーストラリア)やマスターズ2勝のバッバ・ワトソン(米国)と優勝争いを演じ、最後はケビン・ナ(米国)をプレーオフで破っている。そして、今回の2勝目だ。

 丸山に並ぶ3勝目、さらには日本男子初のメジャー制覇へ期待は膨らむばかり。4月7日開幕のマスターズ(ジョージア州オーガスタナショナルGC)までは2カ月を切った。松山は目の前の一戦一戦に集中していると思う。しかし、現地で取材することが決まっている私は、早くも勝手にワクワクしている。【亀山泰宏】