組織の「風通し」は良い方がいい。

 前週の男子ツアー、関西オープンは、24歳の今平周吾が初優勝を飾った。ツアー途中には、49歳の谷口徹との夕食をともにしたという秘話も飛び出し、世代の壁が高くない雰囲気をうかがうことができた。2週前の国内メジャー初戦・日本プロ選手権では、36歳の宮里優作が谷口との優勝争いに逆転勝ち。谷口から「勝てる時に勝っておかないといけないぞ」と熱いエールを送られていた。

 また日本プロ選手権の第2日には70歳の尾崎将司がエージシュート達成寸前の71で回る好ラウンドをみせ、出場選手たちを驚かせた。宮里優は、時あるごとに尾崎将に教えを受けていることを明かし「昔は教わりにくかったけれど、今は(尾崎将が)下の世代や若手の相談に親身に乗ってくれる。伝えたい気持ちがあるのだと思う」。

 コース内外でレジェンド、ベテラン、中堅、若手の交流が頻繁にあるのだろう。日本ゴルフツアー機構(JGTO)選手会という「会社」の風通しの良さには、実にすがすがしさを感じる。年代に関係なく、切磋琢磨(せっさたくま)することは優勝争いが面白くなる。話題も増え、必然的に注目度も高まる好循環が生まれるに違いない。

 大学の同期らとの飲み会では、会社の人間関係に話題が集中することが多い。ほとんどが上下関係の愚痴が中心。「上司に無理難題を突きつけられた。『それをあなたがやればできるんですか』と言いたい」。管理職になれば「いったい社長や取締役は何をしているのか」。一般企業では、上司が若かりし頃にどのような仕事ぶりだったかを知るチャンスは少ない。そもそも社内で全員が同じ仕事をしている訳ではない。「基準」がないから納得できず、不満もたまる。

 ところがJGTO選手会の仕事はゴルフだ。テクニック、スコアというプレーすべてで実力を証明できる。全ての世代に一目瞭然の納得感がある。最新のゴルフクラブについて語り合うなど、その世界の「流行」も共有することができる環境だ。70歳の社長、49歳の部長、36歳の中堅社員、24歳の若手社員が同じ「ものさし」で仕事しているから世代を超越した交流が深まるように見える。

 例年以上!? の風通しの良さが、今年の国内男子ツアーを面白くしていくのではないかという期待が膨らむ。と同時に、一般企業にも世代に関係なく同じ「ものさし」で競えるような仕事があれば…。そして風通しが良くなれば…。少しは飲み会の愚痴もなくなるのに…とうらやましくなる。【藤中栄二】