お笑いの千鳥ノブ風に言えば「スイングのクセが強い!」ということになるのだろう。韓国の「虎さん」こと崔虎星(45)、先日行われた男子ゴルフ国内ツアー最終戦日本シリーズJT杯で大ブレークした。インパクトの後に、体をくるりと回転させ、また大きくのけぞりながらボールの行方を追うしぐさは、ギャラリーの注目を集めた。

国内ツアーではまず見られない変則スイングは、ネット、新聞、雑誌、テレビのワイドショーと次々に取り上げられた。そのスイングで成績が伴わなければ、ただのキワものとして片付けられただろうが、崔は4日間で通算4アンダーと、成績上位者30人しか参加できない大会で、堂々の10位に入った。何より、崔のティーショットは、一緒に回った誰よりも正確にフェアウエーの真ん中に転がっていた。

ギャラリーを沸かすのは、スイングだけではない。アドレスに入る前、右手でドライバーを高く掲げ、ヘッドの部分を見詰め集中する場面でも、大歓声が上がる。今季開幕から始めたルーティンで「それを取り入れてから調子が良くなった」と、これも自分で考えた。野球のイチローや、ラグビーの五郎丸のように、そのルーティンも一流だ。

ゴルフ選手のスイングに個性を見つけるのは、なかなか難しいと思う。しかし、JGTOの青木功会長は「オレたちがやっていた時代は、遠くからでも、今打ったのは青木だとか、ジャンボが打ったとか言われたものだよ。オレは若いやつには個性を磨けっていってるけど、日本のツアーにも崔のような個性派が出てきてよかったと思っているよ」と話した。

青木会長は、崔のスイングについても「自分で編み出したスイングだからいいんじゃないの。インパクトまではスムーズだしね。よほど感覚のいい人じゃないとできないよ」と評価。そして「オレのスイングなんて、一番疲れないスイングとか言われたし、いいスイングなんてないんだよ」と、持論を語った。

崔は、7~8つの職を転々とし、25歳からゴルフを始めた。ゴルフ場に勤めながら、本と練習にくる客のスイングを見て独学で今のスイングにたどり着いた。「人間の顔がそれぞれ違うように、スイングもいろいろあっていいと思います」と言う。今後、崔のゴルフを見てゴルフを始める子どもたちも出てくるかもしれない。そんな子どもたちに際は「自分がやりたいことを一生懸命続けていけば、夢はかなう」とエールを送った。来年も、虎さんは、国内ツアーを大いに盛り上げてくれるはずだ。

【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

ティーショットを放ち、のけ反って打球を見つめる崔虎星(2018年12月2日撮影)
ティーショットを放ち、のけ反って打球を見つめる崔虎星(2018年12月2日撮影)