金谷拓実(2018年11月10日撮影)
金谷拓実(2018年11月10日撮影)

意外だった-。1月上旬の米ツアー、ソニー・オープン(ハワイ・ワイアラエCC)を取材した。アマチュア男子で将来を有望視される金谷拓実(20=東北福祉大2年)が、参戦し、米ツアーデビューを果たした。結果は、初日から71、70の通算1オーバーで予選落ち。それでも、普通だったらアマで米ツアー初参戦。充実感に浸っていると思いきや、試合後は笑顔をほとんどみせない、悔しさいっぱいの表情だった。

そこには参加することに意義があるといった精神は存在してはいない。20歳にして、その表情はもうプロのそれだった。「自分のプレーをして負けたなら納得する部分もあるとは思うけど、それがまったくできなかった。悔しいです」。世界のトッププロに加え、日本からも、大学の偉大なる先輩、松山英樹、池田勇太など並み居る有力選手が相手だったとはいえ、納得はしない。世界で戦っていく覚悟が、20歳にしてすでに備わっている。

追う背中がある。それが、自分を見失わず、今に甘んじない1番の要因だろう。大会期間中、先輩、松山とともに練習をこなし、食事をともにした。技術はもちろん、大会に臨む姿勢、ルーティンなども間近で見続けた。「多くを語らない人ですが、背中を見るだけで違う」。

決勝ラウンドが始まった3日目からはギャラリーに交じって、松山のプレーを見守った。ツアー5勝を挙げ、ストイックなまでに米ツアーで戦い続ける先輩の姿は、世界で戦う上での指針になっているんだろう。ラウンド中、失礼ながら何度か声をかけさせてもらったが、視線はほとんど松山から外さなかった。その姿勢が金谷の思いを物語っているように思う。

5歳で両親の影響で競技を始めると、負けん気と探求心でめきめきと頭角を現してきた。高2だった15年の日本アマチュア選手権を史上最年少で制覇。大学1年の17年には日本オープンで2位。さらに、昨年10月には松山以来、日本勢2人目となるアジア・パシフィック・アマチュア選手権を制覇し、「マスターズ」と「全英オープン」の出場権を得た。今度は世界最高峰の舞台で松山と再会する。

マスターズが、約3カ月に迫っている。そこに向け、昨年、松山や宮里優作からアドバイスを受けた飛距離アップに取り組んでいる。「練習以上のものは出せない。自分のプレーをいかに試合で出せるか。そういう意味では今回、出場したことは経験になった。マスターズではまずは予選を通過してベストアマを目指したい」。目の前のことに一喜一憂しない高き“プロ意識”を持ち合わせる20歳の世界挑戦。しばらくは目が離せそうにない。【松末守司】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

◆松末守司(まつすえ・しゅうじ)1973年(昭48)7月31日、東京生まれ。06年10月に北海道本社に入社後、夏は競馬、冬はスポーツ全般を担当。冬季五輪は、10年バンクーバー大会、14年ソチ大会、今年3月の平昌大会と3度取材。五輪担当を経て12月からゴルフ担当。

東北福祉大の先輩松山英樹(左)と握手する金谷拓実(2018年11月8日撮影)
東北福祉大の先輩松山英樹(左)と握手する金谷拓実(2018年11月8日撮影)