国内女子でツアー制が始まった88年度の賞金ランクを見てみた。1位吉川なよ子(当時=最終戦終了日11月27日時点=39)2位大迫たつ子(同36)3位高須愛子(同36)…50位戴玉霞(同35)。賞金シード獲得者の平均年齢は-。

「32・3歳」。

で、今年。最終戦終了日の12月1日時点で、1位鈴木愛(25)2位渋野日向子(21)3位申ジエ(31)…50位浜田茉優(24)。同シード選手の平均年齢は-。

「26・26歳」。

渋野を筆頭に勝みなみ、畑岡奈紗、河本結ら98年度(98年4月2日~99年4月1日)生まれの20、21歳、つまり“黄金世代”が11人も名を連ねた。シード選手の平均年齢は31年間で6・04歳若なったけど、低年齢化に拍車がかかったんは、ここ数年の話です。

今季終盤、名のある女子プロ数名がツアー第一線からの撤退を表明した。ツアー9勝の諸見里しのぶ(33)7勝の佐伯三貴(35)3勝の一ノ瀬優希(31)3勝の大江香織(29)。みんな、LPGA会員=プロのままやし「引退」とは言わん。「セミリタイア」いう表現が適当かな。

ゴルフは生涯スポーツです。競技ゴルフでも年齢とともに経験値は増える。コースマネジメントやショートゲームのスキルは上がるっちゅうか、上げられる。年とともに筋力が落ちても、そこに活路が見いだせる…はずなんやが。

一ノ瀬は11月末の大王製紙エリエールの第3ラウンドで、渋野と同組になった。通算7アンダーの渋野を1打差で追ってスタート。序盤3番でダブルボギーをたたいたが、5~7番で4つスコアを伸ばすなど食らいついた。だが、最終的に13アンダーにした渋野と4打差ついていた。

「最後にまさか渋野ちゃんと回れるなんて。本当に久しぶりにあんな大ギャラリーの前でプレーして緊張した。楽しかった」

戦えてたがな。まだまだいけるんと違う?

「でも、彼女は“そこ狙うか?”という攻めを見せる。それを目の前で見た。怖さがない。若さでしょうね。でも、私たちはいろいろ知っちゃってるから」

何度も故障した。練習のしすぎで疲労骨折したこともある努力家だ。今季開幕前には左肩を折った。必然、飛距離は落ちた。その日、ドライバーショットは渋野に20ヤード、時に30ヤードほど置いて行かれた。「この時期はまだいい。ラフも枯れてるし、ランを望める。でも、夏場はダメです。芝が元気だから」。結局、そこにすべてが集約されているのかもしれない。

最後に8番パー3の話を振ってみた。左奥ピンを攻め、グリーン奥にこぼした。ピンまで10ヤード。しかも、グリーン面は下り。最悪の状況。そこから上げるアプローチでエッジにふわりと落とし、ピン下3メートルへ。パーパットをねじ込んだ。渋野らの世代がまだ持っていない“プロの技”やった。

「56度のウエッジ。ああいうの大好き。あ~アプローチだけのトーナメントがあったらなあ」

若さ、勢い、パワーが席巻する女子ゴルフもええけど、それだけやったら味気ない。ベテラン(というには若いけど)数人のセミリタイアが残念なだけに、その分残ったベテランに頑張ってほしい。時にはパワーをしのぐ技、知恵が光るツアーなら、もっとおもろなると思う。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

11月23日、ティーショットを放つ一ノ瀬優希
11月23日、ティーショットを放つ一ノ瀬優希