ニトリレディース(27~30日、北海道・小樽CC)の賞金倍増には、ビックリした。総額が当初の1億円から2億円、優勝賞金で言えば1800万円から3600万円。主催者のニトリホールディングス代表取締役会長兼CEO似鳥昭雄氏は「明るい話題を届けてくれる女子プロゴルファーのために」とコメントを出しました。関係者は100%感謝するべきでしょう。

ただ、引っかかることがあります。日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は、増額分をなんで賞金ランク加算対象にしたのか-。

賞金シードは賞金ランクで決まる。今年から成績、出場試合数などを数値化したメルセデスランクの50位以上でシードがとれるようになったけど、賞金ランクは依然大きな物差しです。

そもそも各大会の賞金額はシーズン日程の発表時に決まっていて、選手はそれを踏まえてスケジュールを組みます。今年は全く先の見えない状況ですが、だからといって、開幕後にランク加算対象の賞金額を変えるのは…。しかも1億円増、丸々1試合分ですよ。

ニトリレディースには元賞金女王イ・ボミ、昨季賞金ランク2位申ジエ、同5位ペ・ソンウら一部の韓国勢が出場できません。在留資格(興行ビザ)の期限切れなどで、入国できないからです。「日本ツアーに出るのに、日本におらんのがあかん」という意見もあるでしょう。それでも、自分の出られない大会で賞金ランクに絡む賞金額が急に大幅増すれば「え?」と思うんじゃないでしょうか。

ツアーを取り巻く状況は極めて流動的です。JLPGAは今年と来年を合体させ「20-21年シーズン」とし、今年のアース・モンダミンカップから34試合消化時点でシードを決める特別措置を決めましたが、果たして来年の試合数が今年ほど(当初37試合)見込めるのか。来年の試合開催の申し込みは今月末が期限。くすぶる放送権の帰属問題、先が見えない新型コロナウイルス感染状況を考えれば、撤退するスポンサーが出てきても全然不思議じゃありません。

そんな不確定要素が多い中、ツアー出場権を持つプロ全員が出場できない大会で、賞金シードに影響する部分を急に変更するのは、やはりアンフェアだと思うわけです。

JLPGAは今回の似鳥会長の“おとこ気”に対し、増額分を開催地区・北海道の医療従事者支援に回すとか、ランク加算対象外の“ボーナス扱い”にする案などを検討すべきだったんじゃないでしょうか。ところが、協会関係者に聞くと、上層部にそんな気配はなかったらしいです。

誰もが納得する選択は難しい、というか不可能でしょう。しかし、不透明、不安定な今だからこそ、避けられる不公平は避ける。そんな配慮、心遣いはあってよかったのでは、と思えてなりません。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)