日本のプロキャディーの第一人者的存在、清水重憲氏(46)が8日、兵庫・美奈木GCで若手男子プロにコースマネジメントを指南した。本来キャディーはゴルファーの黒子なのだが、国内男女ツアーで通算38勝を支えた同氏の持つ経験を、経験の浅いプロが求め、今回の試みが実現した。

清水氏がプロ3人、トップアマ1人を“生徒”に18ホールを回り、談笑しながら助言を与える。「ここでドライバーを持つ意味がある?」「運に頼ったゴルフじゃダメですよ」「ターゲットはぼんやりじゃなく、しっかり決めないと」。和やかな雰囲気の中、時折、真顔で話し合いながら“講義”は進んだ。

清水氏は言う。

「僕はコーチじゃないから、スイングとか技術は教えられません。でも、コースマネジメントは別です。今の若いプロのほとんどはジュニアからゴルフをしっかりやってきて技術は高いけど、マネジメントが十分かと言えば、そうでもないんじゃないですかね」。

それでも、若手とはいえプロだ。ピン位置から逆算した第2打、第1打の狙い所、グリーンを狙う際のセーフティーなサイドなど、基本的なマネジメントはわかる。なのに、それをなぜ、今更-。「みんな、欲を出し過ぎたり、意外と漫然と判断したりするんですよ」と清水氏は言った。

例えばパー5。距離的に2オンを狙えるが、グリーン前にあごの高いバンカーがある。ピン位置はグリーンの奥深く。狙って乗ったもののイーグルパットが20メートルとなれば3パットの危機だし、2オンできずバンカー越えのアプローチや、中途半端な40ヤードが残れば、やっかいではないか?

それなら短いクラブでフェアウエーに刻み、ピンまで100~120ヤードからウエッジで狙った方が、より好ましいバーディーチャンスにつけられる可能性の方が高いのでないか?

バーディー奪取、悪くてもパーセーブをするために、より高い確率を目指すことがスコアメーク上は重要になる。冷静に考えれば分かるジャッジだが、それを「欲」や経験不足から焦りなどが邪魔をする。

この日の“生徒”の1人、田村光正プロ(29)に感想を聞いた。

「僕はクラブ選択のマネジメントにはある程度自信があります。ただ、攻めるけど(距離、ライ、風などの)状況をしっかり想定しないといけない場面とか…。今日のように清水さんに改めて口にしてもらうことで、再確認できます。“自分の考えは正しかった”と自信を持つこともできました」。田村プロは東北福祉大で松山英樹と同級生、昨年まで2年連続で日本オープンに出て、18年にはツアー8試合で戦った。それでも、足りないものを補うために、プロキャディーに教えを請う場は有意義なようだ。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

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ツアー通算33勝をサポートした森本真祐氏が代表理事、清水氏が副代表理事を務める日本プロキャディー協会は19年10月の設立。今回のようなプロだけでなく、アマチュアも対象に「プロキャディーによるコースマネジメント講習」を受け付けている。まだ手探りの段階だが「プロキャディーとゴルフ界に、新しい価値と創造を。」を念頭におき、トーナメントでバッグを担ぐ“本業”以外でも、プロキャディーの活動の場を広げていく狙いがある。料金等の詳細は同協会HP procaddy.or.jp