ゴルフのオーガスタ・ナショナル女子アマチュア選手権で滝川二高3年の梶谷翼(17)が日本人初優勝を飾った。男子ゴルフのメジャー、マスターズを開催する世界屈指の名門コース、オーガスタ・ナショナルGCでたどり着いた頂点。近年の日本女子ゴルフ界の隆盛を表すような出来事が、またひとつ起こった。

次から次へと新しい選手が出てくる。19年には梶谷の地元岡山県出身の先輩、渋野日向子(22)が全英女子オープンで優勝。日本人42年ぶりの海外メジャー制覇は大きなフィーバーを巻き起こした。渋野らの年代には他にも米ツアーで活躍する畑岡奈紗らタレントが多く、「黄金世代」と呼ばれている。

そのまま同世代が女子ゴルフ界をけん引するかと思いきや、昨年はそのわずか2学年下、「ミレニアム世代」と呼ばれる00年度生まれの選手たちの国内ツアーでの活躍も目立つようになった。同年3勝をあげた古江彩佳や同1勝の西村優菜、19年のオーガスタ・ナショナル女子アマチュア選手権で3位に入っていた安田祐香らこちらも実力者ぞろいだ。

さらにその1学年下にはすでに国内ツアー2勝の笹生優花や、先週行われたヤマハ・レディース葛城で2位の山下美夢有、西郷真央らもいる。01年度生まれの彼女たちは「新世紀世代」。ここまでくると梶谷ともわずか2学年差。山下に聞くと、梶谷とは「一緒にプレーすることも多かったし、仲がいい」と明かし「これから絶対にくると感じていました。そういう子たちがどんどん出てきていることは知っています」と刺激を口にしていた。

関係者に聞くと、梶谷より下の世代にも有望選手は多く、中学生年代の大会予選カットラインは年々、上昇傾向にあるという。関東で小学生年代からのゴルフスクールを運営する別の関係者は「入会したいとやってくるのは圧倒的に女の子が多い」と話す。男子でも19年8月から約1年間、世界アマチュアランキング1位を守って同年度のアマ世界一の称号「マコーマックメダル」を受賞した金谷拓実(22)をはじめ、昨年11月に松山英樹、金谷に続く日本人3人目の世界アマランキング1位に立った中島啓太(20)ら若手有望株が出てきている。それでも層の厚さや勢いでは女子の方が勝っているようだ。

今後、期待していきたいのはそうした選手らの世界での活躍。先週行われた女子ゴルフのメジャー、ANAインスピレーションには黄金世代から渋野、畑岡、河本結、原英莉花の4人が出場。彼女らの年代には海外へ目線を向けている選手も多くなってきている。

国内では黄金世代とミレニアム世代に挟まれた「はざま世代」とも言われる99年生まれの稲見萌寧(21)が先週のヤマハ・レディース葛城を制覇。優勝会見では梶谷ら若手の台頭について「負けないような実力をつけて、圧倒的な力をつけて、ずっと上位で戦っていたいなという気持ちをあらためて抱きました」と力強く語った。10代後半~20代前半まで、ほぼ1学年刻みでタレントがひしめき合う戦国時代の様相。抜け出すのは誰なのか。次に世界で勝つのは誰なのか。切磋琢磨(せっさたくま)の末に迎える日本ゴルフ界の躍進に期待したい。【松尾幸之介】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)