大東建託いい部屋ネット・レディースで今季4勝目を挙げた申ジエ(33=韓国)は、大会期間中に札幌市の美術館を訪れた。午前中にプレーを終えた後、大好きなキース・ヘリング展を見に行ったという。「私は趣味で絵を描くので、絵を描くときの表現に自信を持って描いているところが好き」と話していた。

米国で賞金女王になり、世界ランク1位にもなった申は、活躍の場を日本に移してからも、毎年コンスタントに複数優勝を重ね、今回で日本で28勝目となった。ゴルフに人生のすべてを注ぎ込んできた申だが、最近心境の変化があったという。「最近、自分はゴルフしかやっていない気がして。今まではゴルフに集中することだけを考えてきたが、自分の視野が狭くなっていることに気付いて、もうちょっと視野を広げようと思った」。大会期間中の美術館訪問も、そんな気持ちの表れだったのだろう。

最近の女子ゴルフ界は、若手の活躍が著しい。時節柄、会見の席で東京五輪に関する質問も出たが、ソフトボール経験者の渋野日向子以外は、意外と「私はゴルフ以外は見ないので」といった答えも耳にした。

申は33歳とベテランの域に達し、ゴルフオンリーだった競技生活を振り返り、それを改める心境に達した。女子ゴルファーだけではなく、若いアスリートには、せっかく自国で開催された東京五輪で世界のトップアスリートの姿やそのプレーに触れて欲しいと思う。競技は違うが、トレーニング方法や食事、メンタルトレーニングなど、勝者のインタビューの中からゴルフ競技に役に立つヒントが得られるかもしれない。

そういえば、前週優勝のママさんゴルファー、若林舞衣子が、5年ほど前のオフにソフトボール日本代表のエース、上野由岐子と合同トレーニングをした話をしていた。「マンツーマンで付き合ってくれて、上野さんの感覚的な話を聞けた」と話していた。違う競技や競技者の中から飛躍へのきっかけをつかむ例もあるのだ。

日本では、幼い頃から1つの競技しか経験しないでプロになる例が多い。最近は、小学生ぐらいまでは、複数の競技を経験し、その中から自分に合った競技を見つけるという考え方もある。プロ養成所のような高校、大学を出て競技オンリーで、社会常識も身に付けていないでは困る。

若いゴルファーには、ゴルフ以外にも目を向けて視野を広げることも考えて欲しい。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

大東建託いい部屋ネットレディースを制しガッツポーズの申ジエ(2021年7月25日撮影)
大東建託いい部屋ネットレディースを制しガッツポーズの申ジエ(2021年7月25日撮影)