どうなればロストボール(紛失球)になるのか?

ゴルフ規則18「ストロークの距離の救済、紛失球」の2a(1)には「球が紛失となる場合。プレーヤーまたはキャディーが球を探し始めてから3分以内に見つけることができなければ、紛失となる」と書いてある。

16年全英オープン第3ラウンドでボールをロストし探す池田勇太(中央)
16年全英オープン第3ラウンドでボールをロストし探す池田勇太(中央)

ちなみに“3分以内”の制限時間は、打ち込んだと思われるエリアに着き「さあ探しますよ」という時点からカウントされる。従来は5分だったものが19年1月1日から、プレーファーストの観点に立ち、競技のスムーズな進行を目指して短縮された。

24日のパナソニックオープン第2ラウンドで、アマチュアの河本力(21=日体大4年)がロストボールの憂き目に遭った。16番パー5、左ラフからの第2打が右OBゾーンに飛んだ。暫定球は左林方向に飛んだ。ロストしたのはその暫定球で、現場に居合わせた競技委員が時計で計測、キャディーが球を発見したが、競技委員は計測時間を「3分10秒」と示し、タイムオーバーと判断。河本は打った地点に戻り、OB、ロストの1罰打などを加えた6打目を行い、グリーンに乗らず、7オン2パットの「9」になった。

責任は当然、ロストするような場所に打ち込んだ河本にある。記者はたまたま現場にいて、一緒に球を探した。河本は無念そうで、競技委員は気の毒そうだったが、規則上問題なかった。ただ1つ、しっくり来なかった。競技委員が河本に、計測の開始を告げなかったことだ。

海外のメジャーなどでは競技委員が1組に1人帯同するが、JGTO(日本ゴルフツアー機構)のツアー競技はコースに4人しかいない。国内女子でも似たようなものだろうし、選手から救済措置などの確認を受けたい旨の連絡があるとカートに乗って現場に出向く。つまり今回、河本の組に居合わせたのはかなりの偶然だ。とはいえ、せっかく居合わせたのだ。なぜ「今から計測しますよ」と本人に言わなかったのか?

JGTOに確認すると、競技委員は河本に「3分たちましたから(打った地点に)戻りましょう」と計測終了は告げたという。ただ、河本はわずかの差で球が見つかったこともあり「いつから計測したんですか?」と質問した。同組の山下和宏が、競技委員がストップウオッチを押した瞬間を見ていたため、計測に問題がなかったことは“立証”されたが、後味の悪さは残った。

ゴルフは選手が審判だ。ミスをした時「潜在的な利益を得ない」ように対処せねばならない。しかし、競技委員がいない状況で球を探す時、自ら「今から探します」と宣言、時間通りに「3分たちました。諦めます」と周囲に告げる選手が何人いるだろう? 多くは“なあなあ”で「3分ぐらい」と判断、微妙な時間で球が見つかれば、そのまま無罰でプレーするのではないか。それは決して良くないことだ。

19年マイナビABCチャンピオンシップ最終日、打球を探す今平周吾(右)
19年マイナビABCチャンピオンシップ最終日、打球を探す今平周吾(右)

JGTOに聞くと、球探しの現場に競技委員が居合わせた際、当該選手に「計測開始」「計測終了」を告知するかどうかは、当事者の裁量に任されている。

プロを相手に生意気ながら言ってみた。「競技委員が選手に要らぬ疑念を持たせず、厳密に規則を運用することが、選手の意識向上にもつながるんじゃないですか? そういうコンセンサスをとった方がいいんじゃないですか?」-。

JGTOからは「おっしゃる通りです」と回答をもらった。

ロストボールだけでなく、すべての規則が正確に、わだかまりなく運用されることがフェアプレーにつながると思う。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)