プロゴルファーに趣味のことを聞くと、非常に興味深い答えが返ってくることが多い。国内女子ツアーは、2週前に北海道で行われた、大東建託いい部屋ネット・レディースから今季後半戦に突入。前後半各19試合の間に、今季は1週間だけ、試合が行われなかった週(オープンウイーク)があった。その時に何をしていたか聞くと、思いがけない趣味の話、しかも趣味を通り越して特技というレベルの話を耳にした。特に印象的だった2人を紹介する。

(1)原英莉花(23=NIPPON EXPRESSホールディングス)=趣味・釣り

すでに記事にしているため、ご存じの方も多いかもしれないが、なんと体調3メートル、重さ85キロのシロカジキを釣り上げていた。原英にオープンウイークに何をしていたか聞くと「それ聞いちゃいます?」を連呼しながらニヤリ。やけにもったいぶると思ったら、おもむろにスマートフォンを取り出し、釣り上げた大物の隣でVサインをつくっている写真を披露した。

自動ではなく、完全に手動で引き上げるタイプのリールで、30分以上も船上で大物と“格闘”したという。「10回以上は『もう無理!』って言いながら釣りました(笑い)。シロカジキは(カジキマグロの中でも)1000匹に1匹と言われているらしいです」と話すと、もはやニヤニヤが止まらない。釣りは「3年前からハマってます」と、生活拠点の神奈川県、練習拠点の千葉県から遠い、日本海まで行くこともあるという。今回釣り上げたのは「えー、どこなんだろう」と、神奈川県を船で出発し、太平洋のどこかで釣り上げたらしい。

気分が落ち込んだ時に、知り合いに頼んで船を出してもらい、出掛けるパターンが多いという。当初は釣り上げたシロカジキを「90キロ」と話していたが、報道を見た同行者から「85キロだよ」と訂正が入った。写真を披露した翌日に「すみません、90キロとか大げさに言ってしまって」と、頭をかいたが、衝撃写真であることには変わりはない。昔、マグロを釣っている姿をテレビで見た、故人の俳優、松方弘樹さんの後継者になり得るほどの釣り技術、強運ぶりを感じずにはいられなかった。

その日はゴルフそっちのけで、釣りのことばかり質問してしまった。あまりにも釣りのことばかりを聞いたからか、おそらく同士と思ったであろう原英に明るく「釣りされるんですか?」と聞かれたが「いや、やらないんですけど…」と即答。何とも言えない空気になった。


(2)佐藤心結(みゆ、19=ニトリ)=趣味・クレーンゲーム

シロカジキほどの大きさはないが、獲物を取ることに関しては、ルーキーの佐藤心も負けていない。クレーンゲームに関しては、もはや趣味の域を超越した腕前。その実力を、うかがい知ることができるコメントが以下の通り。

佐藤心 「クレーンゲームは頑張ってマスターしようかなと思っています。この前(オープンウイークに)、ポケモンのぬいぐるみを4体ゲットしました。失敗もしますけど、1体平均だと500~600円で取ります。この前、カワイイぬいぐるみがあって、どうしてもほしかったので、1回200円と少し高かったですが、3回で取りました。1回では取れないので、1回目でどこに置けるか(=どこまで、ぬいぐるみを移動できるか)ですよね。マネジメントですね(笑い)。台を見て『これは取れそう』とかあるんですよ。アームの強さも1回やってみないと分からない。(アームが)弱い台はやめて、強い台で攻めます」。

本職のゴルフでは、高校3年のアマチュアだった昨年10月、スタンレー・レディースでプレーオフまで優勝を争い、わずかに渋野に敗れて2位だった。今季も6月のニチレイ・レディースで第1、2ラウンドで首位に立ち、最終的に5位など、ルーキーで最もツアー初優勝に近い存在といえる。日々、成長するマネジメント能力。クレーンゲームでも、1回目でどこまで運び、最終的に3回目でゲット、運が良ければ2回目でも、などと戦略を練っているようだ。ただ、狙い通りに物事が進まないことがあるのは、ゴルフもクレーンゲームも同じ。ミスショットにも動じない、ルーキーらしからぬ落ち着き、修正能力の高さは、趣味を通じて自然と身に付けているのかもしれない。

プロゴルファーの中でも、ファンの注目度の高い選手は、もしも現在の道に進んでいなくても、何か1つのことを極めようとする能力や、普通の人にはないような何か“もっている”ものがあるように感じた。趣味の話とはいえ、いや、趣味の話だからこそ、人間性が表れる。そう感じずにはいられなかった。【高田文太】

誕生日にファンからプレゼントされた似顔絵を手に笑顔を見せる佐藤心結
誕生日にファンからプレゼントされた似顔絵を手に笑顔を見せる佐藤心結