国内女子ツアー最終戦JLPGAツアー選手権リコーカップで、西郷真央(21=島津製作所)が出場40人中の最下位に終わった。通算35オーバーは、宮崎CC開催となった03年以降で大会ワースト。従来の記録が10年大会の通算23オーバー(出場29人、ウェイ・ユンジェ)だし、通算11オーバーで39位だった尾関彩美悠とは24打差もあった。とんでもないスコアだし、西郷には大きな汚点。それでも、あえて“さすが”と言いたいことがある。

逃げなかった。

メルセデス・ランク順の2サムでペアリングされた第1日、同じ最終組だった山下美夢有が6アンダーの首位発進だったのに対し、11オーバーでツアー自己ワースト2位の83をたたいて最下位発進した。今季序盤10戦5勝した一流プロには残酷なラウンドだ。人によっては“棄権”してもおかしくないが、しなかった。予選落ちのない、選ばれた40人の大会だ。当たり前かもしれないが、4日間、72ホールを全うした。

ほれぼれする“100ヤード以内”が何度もあった。

通算11オーバーで迎えた第2日。6番パー4はフェアウエーウッド(FW)を右林に打ち込み、出すだけだった後の第3打をピン1メートルにつけ、パー。7番パー4は25ヤードのアプローチを決めてパー。

通算22オーバーで迎えた第3日。2番でラフから60ヤードをウエッジで1メートルにつけてパー。3番はラフから50ヤードをウエッジで1・5メートルにつけ、1パット・ボギー。8番はショートサイドのバンカーからスピンを効かせてお先のパー。

通算26オーバーで迎えた最終日。8番で右林ベアグラウンドから、バンカー越し、10ヤードのアプローチを50センチにつけてパー。9番パー5は第1打を池に入れながら、最後はラフから60ヤードを1メートルに寄せてパー。

50~60ヤードの中途半端な距離をしのぐウエッジ。高難度のアプローチ。どれだけ周囲から取り残されようが、適当な“投げたプレー”はなかったと思う。

不調の理由ははっきりしている。4月の寝違え、首の不調、スイングの乱れ、それが最も長いクラブのドライバーショットで“爆発”し、FW、ユーティリティー、アイアンのスイングまでおかしくなった。

西郷は、いつも明快だ。技術を語るときも、感情を語るときも“誰かに借りてきた言葉”ではなく“自分の言葉”。聞く者にそう感じさせる説得力がある。「(第2日からの)3日間は何かきっかけをつかみたいと思ってやってました。原因は全部わかってるけど、わかっていてもできない。ドライバーでフルショットしたら、右にOBするイメージしかない」と言い、ドライバー、ティーショットに「恐怖」という表現まで使った。

困難に向き合う姿に期待したい。ドライバーは第2日以降、最も距離の長い2番パー5でしか使わなかったが、同日朝のドライビングレンジでは30球も打った。ラウンド後は連日、黙々とドライバーを打った。来年の開幕、3月初旬まで約3カ月。「まずスイングをノーマルな状態に戻したい」。復調し、より強くなって戻ってくる西郷の姿が見たい。【加藤裕一】

ティーショットを打ち終えセカンドショット地点に向かう西郷真央(2022年11月27日撮影)
ティーショットを打ち終えセカンドショット地点に向かう西郷真央(2022年11月27日撮影)