毎週火曜日、好評連載中のタケ小山の「ゴルフ即効薬~今週の処方箋」。今週もマネジメント編が続きます。テーマは「我慢と勇気のややこしい関係」。自分がやっていることがどちらなのか。それを考え、理解することでマネジメント能力は1段高いレベルに上がりますよ。


ゴルフにおける我慢と勇気は紙一重
ゴルフにおける我慢と勇気は紙一重

 よく、ゴルフはコースとの闘い、自分自身との闘いであるといわれます。確かに、目の前の相手と戦うマッチプレーでも、大勢と順位を競うストロークプレーでも、相手はコースであり、自分の心持ちや技術。だから難しいともいえますね。

 そんな中でよく使われる言葉が「我慢」と「勇気」です。プレー後のプロの話に耳を傾けても「今日は我慢のゴルフでした」とか「勇気を持って攻めました」なんて言葉がよく聞こえてきます。でも、ゴルフにおける我慢って何でしょう? 勇気ってなんでしょう? 攻撃せずに守るのが我慢? 狙っていくのが勇気? ちょっと違います。

 実は、ゴルフにおける我慢と勇気は紙一重なんです。守るだけ、逃げるだけが我慢ではありません。例えば、難しいポットバンカーにつかまって、グリーン方向には絶対に出せない。無理してグリーンを狙って、ミスしてバンカーにボールが戻ってきてしまうのは勇気ではありません。むしろ、冷静に後方に出して次の一打にかけるのが勇気。これは我慢ではありません。


自分と常に会話をしながらプレーする
自分と常に会話をしながらプレーする

 では、日頃のあなたの腕前では確率が半分しかない池越えのショットを狙っていくのは我慢でしょうか? 勇気でしょうか? いきなりレベルの高い質問になってしまいましたね。狙わずに安全策を取る勇気もあれば、リスクを分かった上で狙っていく勇気もある。狙わないのが必ずしも我慢だというわけではないということです。

 けれども、150ヤードのキャリーを出すことができないのに、池越えを狙うのは勇気でも我慢でもありません。ただの無謀。おバカさんです。だって、確率は0%。たまたま岩にでも当たってカーン! と跳ねるケースくらいしか、池は越えませんからね。

 こんな風に自分と常に会話をしながら、プレーするのはゴルフならではの醍醐味(だいごみ)です。その中に常にあるのが我慢と勇気のせめぎ合いです。これを上手にコントロールするためには、自分の技量をしっかりと把握していなければなりません。クラブによる自分の飛距離を、キャリーがどれだけでランがどれほどなのか知っていること。どんなライからならどの程度の確率で打てるのかということ。それが分かった上で、自分がしようとしていること、あるいはしたことが、我慢と勇気のどちらなのかを考えることで、さらにあなたのマネジメント力は上がることでしょう。


今週の処方箋

ゴルファーの辞書に無謀の文字はない

【服用法】紙一重の我慢と勇気。無謀との違いをしっかりと理解するべし!


 ◆タケ小山(こやま)本名・小山武明。1964年(昭39)7月7日、東京都生まれ。中大卒業後、プロゴルファーを目指して89年に渡米し、フロリダ州のゴルフ場所属プロとなる。米、カナダ、オーストラリア、アジアなどのツアーでプレー。07年に帰国し、日本ツアーに参戦。08年に早大大学院でスポーツマネジメントを学ぶ。ザ・ゴルフチャンネル、ゴルフネットワークなどでのトーナメント解説には定評がある。TBS系「サンデーモーニング」の「屋根裏のプロゴルファー」として知られる。InterFMの「Green Jacket」(土曜午前5~8時)、文化放送の「The News Masters TOKYO」(月~金曜午前7~9時)などに出演。


◆協力 ザ・インペリアルCC(茨城県稲敷市)

◆取材・構成 遠藤淳子(清流舎)

◆撮影 山崎安昭